研究概要 |
内容;Diffuse cerebral hypomyelination with cerebellar atrophy and hypoplasia of the corpus callosum, HCAHC(小脳萎縮と脳梁低形成を伴うび漫性大脳白質形成不全症)は、2009年に本邦佐々木らより提唱された新しい疾患概念で中枢神経系の髄鞘形成不全に加え,小脳萎縮と脳梁低形成を伴うゲノムワイドの連鎖解析および全エキソンシークエンス:ハイブリダイゼーションの技術を用い、ゲノム上のエキソン領域を選択的にキャプチャし、高効率に濃縮してから次世代シーケンサーを用いて包括的に解析した。結果;全エキソンシークエンスを3名の患者で行い、1名においてPOLR3A遺伝子のc.2690T>A,p.Ile897Asn /c.3013C>T,p.Arg1005Cysを、2名においてPOLR3B遺伝子の複合ヘテロ接合体c.1857-2A>C, p.Asn620_Lys652 del/c.2303G>A,p.Arg768His およびc.1648C>T,p.Arg550X/c.2778C>G, p.Asp926Gluを同定した。考案;POLR3AおよびPOLR3B遺伝子はRNA polymeraseIII(PolIII)複合体のコアになるサブユニット(RPC1およびRPC2)をコードしており、複合体の3次元モデルの解析から、同定された変異はPolIII活性を低下させると予想された。PolIIIはtRNAと5SrRNAを含む大多数の低分子RNAをコードする遺伝子を転写しており、これらの低分子RNA量が不足することにより髄鞘化不全が起きると考えられる。 Saitsu H, Osaka H, et al., Am J Hum Genet 89 (5):644-651.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記以外の家系についても、予想以上に早く原因特定に至った。原因不明の白質形成不全家系においてエクソームシークエンスによりMonocarboxylate transporter 8 (MCT8) にc.1102A→T, p.R368Xの変異を認めた。家系と連鎖しており、正常200アリルでこの変異を認めないため、原因変異と考える。MCT8遺伝子変異による先天性白質形成不全症は、Allan-Herndon-Dudley症候群とよばれ、MCT8遺伝子異常によりtriiodothronine (T3)のニューロン取り込み低下が神経症状と関連している可能性が考えられており、血清T3値の上昇が診断の手掛かりとなると考えられている。血清T3値の上昇なく白質形成不全が疑われ、診断に苦慮したが、血清TSH,T3,T4の値が正常範囲であっても、考慮すべき疾患であると考えられた。残念ながら、既知の遺伝子ではあったが、新規知見を得たので、下記の論文報告を行った。Tsurusaki Y, Osaka H, Hamanoue H, Shimbo H, Tsuji M, Doi H, Saitsu H, Matsumoto N, Miyake N (2011) Rapid detection of a mutation causing X-linked leucoencephalopathy by exome sequencing. J Med Genet 48 (9):606-609.
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