研究課題/領域番号 |
23591270
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
花島 律子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80396738)
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研究分担者 |
寺尾 安生 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20343139)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 運動適応 / 神経内科 / 小脳機能検査 / 脊髄小脳変性症 / 神経シナプス可塑性 |
研究概要 |
平成23年度は、第一段階として、小脳の機能が関与していると知られている、プリズムで視覚誤差を与えたときの運動適応課題をヒトに応用するシステムを確立した。まず、ボールを投げる課題を行っているときに、プリズムレンズをかけて視覚誤差を与えて、その環境に適応させて、その後にプリズムを外してafter effectを測定した。この方法を用いて家族性脊髄小脳変性症において検査したところ、小脳機能異常を反映してプリズム適応が不十分でafter effectが減少している可能性が示唆された。次に、この方法をより簡便に測定誤差を少なく施行するために、タッチパネル上の標的に指をあてる方法でのプリズム適応検査法を確立した。この方法では頭の位置を固定し、標的を見る時間も遮断メガネでコントロールでき、標的と指が当たった場所を自動的に誤差なく計測ができることから、プリズム適応を正確に評価することが可能となった。またプリズムレンズもより自然に視覚誤差をあたえることができる最適なものを選択して、より純粋にプリズム適応の機能を検出するように図った。このシステムにより健常者においてafter effectがより大きく検出できるようになり、プリズム適応を正しく評価できることが分かり、小脳疾患患者への応用をはじめている。更に、経頭蓋的磁気刺激法を小脳に与えることで、小脳のシナプス可塑性に変化を与えて、プリズム適応がどのように可塑性変化に影響されるか分析するために、健常者において小脳上の連発磁気刺激検査法の開発も行った。健常者を対象にして、小脳上の連発磁気刺激検査法は運動誘発電位自体には変化を与えないことを確認した。今後、この方法をプリズム適応に対して応用していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検査法の確立に使う物品の納品が遅れたため、小脳疾患患者さんへの応用数はまだ充分ではないが、システムは順調に稼働していて、速やかに進むと考えられる。また、平行して磁気刺激法の開発も進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず確立した検査法を多数の健常ボランティアで行い正常値を確立する。この正常値を基盤として、脊髄小脳変性症などの小脳機能障害のある神経疾患患者さんや脳梗塞で小脳に病変が見られる患者さんにおいて、このプリズム検査を行い変化を検討する。このことで、病変の部位とプリズム検査における異常を対応していく。この結果から、プリズム適応に関わる小脳部位が明らかする。さらには、小脳入力系と出力系の機能異常をこの検査を使用することにより、鑑別できるかについても検討し、臨床検査としての応用にも広げていく予定である。また、小脳の運動学習機能を明らかにするために、小脳への連発経頭蓋的磁気刺激法の開発を今年度に引き続きすすめていく。この方法が確立することで、ヒトにおける小脳の神経シナプスの可塑性変化が、プリズム適応などの視覚誤差への適応に果たす役割が、非侵襲的に明らかすることができる。このために、まず、健常者での正常値を確立する。さらには、神経疾患において今まで明らかではなかった小脳の可塑性機能の異常を検出することを目指す。さらに、プリズム適応などの視覚誤差への適応に関連するヒトでの脳内ネットワークを明らかにすることを目指していく。脳幹―小脳―大脳のネットワークがあると予想されるが、ヒトにおいてもこれらのネットワークが重要な役割を持つことを明らかにする。この目的のために、連発経頭蓋的磁気刺激法を大脳の各運動関連部位に与えてプリズム適応への影響を検討し、刺激部位によるプリズム適応の変化を詳細に分析していく。以上のことから、小脳のシナプス可塑性の影響および、小脳可塑的機能に関与するネットワークの機能分担が解明されることを目指す。さらには、小脳の機能検査として臨床にも応用可能にできることをめざし、小脳機能障害部位の詳細な検出および潜在的な小脳障害の検出を目指していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に確立したプリズム適応の検査法および連発経頭蓋的磁気刺激法を、多数の健常者に正常値を確立する目的のため、健常ボランティアを多数募る必要がある。また、神経疾患の患者さんにも被験者になっていただく。このため、検査の謝金や当施設までの交通費および健常ボランティア募集のための広告料などが必要となる。視覚運動課題も適宜改善していく必要があり、ソフト費や部品費などが必要となる。また、連発経頭蓋的磁気刺激法を検査するために、刺激コイルや電極などの消耗品が必要となる。プリズム適応などの視覚誤差課題は、広く患者さんにも簡便に行えるようにするために、設置場所を一つではなく複数個設置していく必要があるため、そのための備品の費用が必要となる。これらの研究成果は、専門家の意見を聞くとともに広く世界に知らしめるために、国内外の学会で発表していき、学会誌にも発表する。このために、旅費および英文投稿費、雑誌投稿費などが必要になる。
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