研究課題/領域番号 |
23591270
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
花島 律子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80396738)
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研究分担者 |
寺尾 安生 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20343139)
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キーワード | 運動適応 / 神経内科 / 小脳機能検査 / 脊髄小脳変性症 / 神経シナプス可塑性 |
研究概要 |
平成24年度は、前年度作成した、プリズム眼鏡で視覚誤差を与えたときの手指の標的への運動順応課題をヒトに応用するシステムを用いて、家族性脊髄小脳変性症で検査を行った。結果、家族性脊髄小脳変性症では健常ボランティアを比較して、小脳機能異常を反映してプリズム適応が不十分で、順応を反映する眼鏡を外した後のafter effectが減少していることが示された。この変化は重症例で悪化していることが示された。また、多系統萎縮症患者にも検討を行い、プリズム適応の障害を示すことができた。さらに、小脳機能の異常の存在が近年示唆されている、本態性振戦においても、プリズム適応が障害されていることが示され、振戦の発症に小脳機能異常が関与している可能性を支持する結果を得ることができた。全体を通じて、本検査は簡易に施行でき、重症のかたでも検査として用いることができた。 また、知覚入力と運動の結果の誤差を与えたときの運動順応課題においては、誤差を急に与える(Abrupt)方法と徐々に誤差を加えていく(Gradual)方法では、順応の機序が異なる可能性があり、本研究のプリズム適応においてAbrupt 法とGradual法を比較した。その結果、両方法において、健常ボランティアに比較してaftereffectが減少していた。一般に外乱を与えた場合の運動順応課題では、abrupt法では外乱が意識に上りやすく大脳皮質レベルの意識的な補正が加わる可能性が考えられているが、本方法では両方法でも小脳機能障害を反映した異常が検出できることがわかった。 今後は、小脳のシナプス可塑性の変化を起こすような刺激を与えた場合のプリズム順応の変化を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度確立した簡易なプリズム順応検査システムを用いて、家族性脊髄小脳変性症をはじめとする多くの症例の検査を行うことができた。その結果、仮説を裏付ける結果が鰓得ている。また、本態性振戦では小脳機能異常を示唆する新しい知見も得ることができた。 更に、検査法が正しく小脳機能異常を反映するか、Abrupt 法とGradual法を比較したところ、簡単に行うことのできるAbrupt 法で充分小脳機能を評価できることが確認することができ、更に来年度の検査へ発展することができる。
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今後の研究の推進方策 |
小脳のシナプス可塑性を起こす刺激法を、プリズム順応の変化を指標として確立する。 小脳上に経頭蓋的に4連発磁気刺激法などを与えて影響を検討する。磁気刺激前後で、上記で確定した運動適応課題を行う。運動適応課題中の各測定項目に及ぼす変化を分析する。特にシナプスの可塑性が関与するとしられている、適応の維持の項目についての変化に着目する。これにより、小脳の興奮性変化が運動プラン系の機能にどのように影響を与えるかを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に確立したプリズム適応の検査法および連発経頭蓋的磁気刺激法を、多数の健常者に正常値を確立する目的のため、健常ボランティアを多数募る必要がある。また、神経疾患の患者さんにも被験者になっていただく。このため、検査の謝金や当施設までの交通費および健常ボランティア募集のための広告料などが必要となる。連発経頭蓋的磁気刺激法を検査するために、刺激コイルや電極などの消耗品が必要となる。プリズム適応などの視覚誤差課題は、広く患者さんにも簡便に行えるようにするために、設置場所を一つではなく複数個設置していく必要があるため、そのための備品の費用が必要となる。これらの研究成果は、専門家の意見を聞くとともに広く世界に知らしめるために、国内外の学会で発表していき、学会誌にも発表する。このために、旅費および英文投稿費、雑誌投稿費などが必要になる。
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