研究課題/領域番号 |
23591273
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 理器 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (00378754)
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研究分担者 |
池田 昭夫 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90212761)
澤本 伸克 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90397547)
松橋 眞生 京都大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (40456885)
國枝 武治 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60609931)
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キーワード | 機能的結合 / 皮質皮質間誘発電位 / 高周波律動 / 睡眠 / てんかん / 皮質間ネットワーク / 意識変容 / 脳波機能的MRI同時計測 |
研究概要 |
H24年度は、平成23年度に引き続き、難治部分てんかんのてんかん外科の術前評価のために硬膜下電極を慢性留置する患者で、研究への参加の同意を得た患者において、生理的な意識変容(睡眠)のネットワーク動態について研究を進めた。皮質皮質間誘発電位(CCEP)を指標に、覚醒度の変化(覚醒~深睡眠、レム睡眠)に伴う皮質間ネットワークの動的変容の評価を試みた。皮質の解剖構築の観点から、一次感覚運動野および大脳皮質連合野における睡眠時の動的変容の差異につき検討した。CCEPの振幅・潜時の検討からは、覚醒時と軽睡眠・深睡眠では、皮質間の機能結合性が異なり、また覚醒時とレム睡眠期では同様の機能的結合性がみられた。細胞構築的には、一次感覚運動野と連合野においては軽・深睡眠時の機能結合性の変容が異なり、連合野において皮質間結合性が増大する傾向が見られた。本年度は国内学会(口演)、国際学会(ポスター)で成果発表し、現在論文準備中である。 長期的な意識変容のモデルとして視床下部過誤腫によるてんかん症候群のてんかん性脳症に注目し、てんかん性放電を意識減損にかかわる脳波プロファイルとして脳波・機能的MRI同時計測(EEGfMRI)を施行し、意識変容にかかわる脳内ネットワークを検討した。てんかん性放電生成にかかわる神経活動の増加としては、視床下部過誤腫~視床背内側核から皮質連合野にかけてのネットワークでみられた。一方、意識の維持に必要なdefault mode networkを形成する頭頂葉外側および内側(楔前部)の神経活動の低下がみられ、発作時の意識減損、および慢性病態としてのてんかん性脳症にかかわると考えられた。国内学会発表(口演)した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生理学的な意識変容である睡眠に関しては、今年度までに侵襲的計測から皮質構築・睡眠深度による皮質間ネットワークの変容について明らかにし、生理的意識変容(睡眠)における脳機能結合性の動態のデータベースを構築できた。脳波fMRI同時計測による睡眠期プロファイリングに基づいた安静時機能的MRI解析から、意識維持にかかわる脳内ネットワーク(Default Mode Network: DMN)の生理的(睡眠時)変容の検討を最終年度に予定するが、その基礎データベースと位置づけられる。 長期的な意識変容の病態モデルとして、視床下部過誤腫によるてんかん症候群のてんかん性脳症に焦点を当てて研究計画を進めている。これまでの研究で本疾患ではDMNの変容がてんかん発作時の意識変容に関わることが明らかとなり、また、慢性病態としてのてんかん性脳症への関与が示唆された。最終年度に予定する術後てんかん性脳症改善時の神経画像的検討の予備的研究として評価される。
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今後の研究の推進方策 |
1)生理的な意識変容(睡眠)のネットワーク動態の解明 非侵襲的計測として、安静時fMRI計測により覚醒時(安静状態)の意識維持にかかわる脳内ネットワーク(Default Mode Network)を同定し、同時計測の脳波による睡眠期プロファイリングから、覚醒度(覚醒~深睡眠)に伴う上記ネットワークの動的変容を評価する。侵襲的計測で同定される覚醒時のネットワークの分布および睡眠時における機能的結合性の変容と照合して、安静時fMRIによる機能的結合性の妥当性・意義を検証する。また侵襲計測のデータに関しては、近年脳内情報処理に関わると注目されている高周波律動(HFO)にも注目し、生理的意識変容下の脳内情報処理過程の変容を検討する。 2)てんかん病態下の意識変容にかかわる脳内ネットワーク動態の解明 長期的な意識変容の病態モデルとして視床下部過誤腫によるてんかん症候群のてんかん性脳症があげられるが、初年度からてんかん外科術前の機能的MRIによるデータ収集を開始している。術後てんかん性脳症改善時に機能的MRIと神経心理・行動データを収集し、術前データと比較検討することで、てんかん性脳症にかかわるネットワークの同定とシステムレベルの代償機転(可塑性)を明らかにする。てんかん性放電により脳内ネットワークが変容・障害されると想定されているが、てんかんネットワーク内の皮質間の機能的結合性の変容・障害の機序については詳細は未だ明らかでない。CCEPおよびCCEPに付随するHFOを皮質間の機能的結合性の指標として、またネットワークを担う白質線維路の統合性を解剖的結合性の指標として、てんかんネットワーク変容について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
収集した各種データはネットワーク型ハードディスク (設備備品費)に保存する。EEGfMRI, rs-fMRIで撮像した画像データの解析をワークステーション上で画像解析ソフトウェア (消耗品費)を用いて行う。皮質誘発電位・脳波信号の解析は、脳波解析用ワークステーションで、生体信号解析ソフトウェア(消耗品費)を用いて行う。MRI撮像(ヘリウム使用代)および皮質脳波およびEEGfMRI計測(特殊脳波帽子、電極、固定枕、特殊ジェル)の消耗品を補充する。得られた研究成果を国内外の学会で発表し(研究成果発表:外国旅費・国内旅費)、学術論文にまとめる(投稿費用・別冊代)。
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