研究課題/領域番号 |
23591274
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
澤本 伸克 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90397547)
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キーワード | パーキンソン病 / 脊髄小脳変性症 / 神経機能画像 / ネットワーク |
研究概要 |
大脳基底核や小脳が変性する神経疾患の運動障害では、[神経細胞変性による脳領域の障害→ネットワークの機能異常→臨床症状]に至る病態生理のうち、[ネットワークの機能異常]を理解することが不可欠である。大脳基底核及び小脳は直接の運動出力を持たないため、これらの障害がネットワークの機能異常につながり、最終的に運動皮質からの出力異常として臨床症状につながるからである。 平成24年度は、運動機能に関わる脳内ネットワークについての検討を継続した。まず健常者において、1.線条体及び視床が、補足運動野(SMA: supplementary motor area)・外側運動前野(lateral PM: lateral premotor cortex)・一次運動野(M1: primary motor cortex)と結合をもつこと、2.SMA・lateral PMの結合領域がM1の結合領域に比べて前方に位置すること、3.SMA・lateral PM・M1の結合領域は互いに重複していること、4.SMAとlateral PMの重複領域はそれぞれとM1との重複領域に比べて大きいこと、を明らかにして報告した (Oguri T, Sawamoto N, et al., NeuroImage in press)。この所見は、運動皮質の神経情報が線条体及び視床で統合されていること、SMAとlateral PMの神経情報の統合の程度はそれぞれとM1との統合の程度に比べてより顕著であることを示唆するものと考えられた。また、パーキンソン病患者を対象とした同様の解析を開始し、運動障害とネットワークの機能異常との関連について詳細な検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の健常者データベース構築に引き続き、平成24年度はパーキンソン病患者データベース構築を目指して、ドパミン神経終末機能を評価する11C-CFTポジトロン断層法(PET: positron emission tomography)、安静時機能的磁気共鳴画像法(MRI: magnetic resonance imaging)、拡散強調MRI及び構造MRIのデータを順調に収集した。これによって、パーキンソン病患者の病態を調べるためのデータベースを得ることができた。 また、健常者データベースを用いた検討から、運動機能に関わる脳内ネットワークを評価する解析方法を確立した。この方法を用いて、健常者では、運動皮質の神経情報が線条体及び視床で統合されていること、SMAとlateral PMの神経情報の統合の程度がそれぞれとM1との統合の程度に比べてより顕著であること、を示唆する新しい知見を報告した (Oguri T, Sawamoto N, et al., NeuroImage in press)。今年度は同じ方法をパーキンソン病患者に適用した解析を開始し、運動障害とネットワークの機能異常との関連についての詳細な検討を開始している。以上のように、本研究は当初の計画に沿っておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度も継続して、健常者の運動機能に関わる脳内ネットワークの評価を継続する。パーキンソン病患者では自己ペースの運動が顕著に障害されることが知られているため、今年度は自己ペースの運動と外的ペースの運動に関わる脳内ネットワークを比較する解析方法を検討する。まずは健常者について、詳細に検討して学会および論文での報告を行っていく。 同時に並行して、既に平成24年度から開始しているパーキンソン病患者の運動障害とネットワークの機能異常との関連についての検討をさらに深める。健常者との比較検討によって、正常ネットワークの破綻及び異常ネットワークの形成がないかを調べ、新たな病態生理モデルが提案できないか、新たな診断法として利用することができないか検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度収支状況報告書の次年度使用額は295,510円であり、研究費執行も当初の研究計画に沿っておおむね順調に進展した。 平成25年度も継続して、神経変性疾患患者のPET及び3テスラ高磁場MRI撮像を行う(現有設備・物品費・人件費・謝金)。得られた画像データは個人情報を厳重に管理しつつハードディスク(物品費)に保存する。画像データは画像解析ソフトウェア(物品費)を用いて、並列処理計算をするために複数のコンピュータで構築したクラスターシステム(物品費)で解析する。健常者と神経変性疾患患者を比較することで、神経変性疾患によってどのように脳内ネットワークが変容するのか、その変容がどのようにして病態に関連しているのかを調べる。得られた研究成果は国外及び国内の学会で報告し(旅費)、論文としても発表する(その他)。
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