研究課題
大脳基底核や小脳が障害される変性疾患では、[細胞変性による脳領域の障害→ネットワークの機能異常→臨床症状]に至る病態生理のうち、[ネットワークの機能異常]を理解することが不可欠である。大脳基底核及び小脳は直接の運動出力を持たず、これらの障害がネットワークの機能異常につながり、最終的に運動皮質からの出力異常として臨床症状につながるからである。パーキンソン病 (PD)においては、[ドパミン神経細胞変性による線条体の障害→皮質基底核ループの機能異常→寡動]という皮質基底核ループの機能異常仮説が提案されている。しかし、この仮説には批判もある。PDでは内側運動前野の活動が低下し、皮質基底核ループの機能障害を反映するものと考えられるが、一方で外側運動前野は活動が亢進するため、両者を皮質基底核ループの機能障害だけで説明することは難しい。我々は、健常者を対象として、磁気共鳴画像法 (MRI)を用いたトラクトグラフィーを行い、解剖学的結合を評価し、線条体が内側及び外側運動前野と皮質基底核ループを構成することを報告した(Oguri T, Sawamoto N 他6名. NeuroImage. 2013;78:353-62)。一方、基底核及び小脳との解剖学的結合の強さを比較すると、内側に比べて外側運動前野の方が小脳との結合が強かった(Oguri T, Sawamoto N 他. 論文準備中)。この結果は、内側運動前野の活動低下が皮質基底核ループの機能障害を反映し、外側運動前野の活動亢進が小脳の代償機能を反映する可能性を示唆するものと考えられた。また、線条体が構成する機能的結合を安静時の機能的MRIで調べると、健常者で認められる線条体-視床前部の機能的結合がPD患者では認められず、これらの機能的結合の障害が病態に関わる可能性を指摘した(Inano R, Sawamoto N 他. 論文準備中)。
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