研究課題
アデノシンA2A受容体はドパミンD2受容体と相反する作用がある。私たちは放射性薬剤11C-TMSXを開発、ヒトでのアデノシンA2A受容体PETに成功した。これまでの研究で、未治療のパーキンソン病(dPD)のアデノシンA2A受容体密度は健常者と有意差はないが、パーキンソニズムの左右差に着目すると重症側で低下していることを見いだした。さらに抗パーキンソン病薬による治療開始後、被殻アデノシンA2A受容体密度が増加することを明らかした。本研究では、運動症状と被殻アデノシンA2A受容体密度の関係を調べた。対象はdPD患者19例。10例に700MBqの11C-MPDX静注後無採血60分のダイナミックスキャンで行った。小脳を参照領域としたLogan法を用いて尾状核頭部(CN)・被殻前部(AP)および後部(PP)のMPDX結合能(DVR)を計算した。9例に11C-TMSX PETは無採血60分のダイナミックスキャンで行い、大脳皮質を参照領域としたLogan法を用いてDVRを計算した。11C-CFT PET・11C-RAC PETはスタティックスキャンで行い、CN・AP・PPのCFT・RAC集積係数(URI)=(関心領域―小脳)/小脳を算出した。安静時振戦と固縮の評価は、UPDRSにおける片側上下肢の点数の合計を用いた。対応する片側UPDRSスコアとDVR・URIを回帰分析し、p<0.05を有意とした。その結果、PPにおけるCFTのURIは安静時振戦・固縮ともに有意な負の相関があったが、MPDX・TMSXのDVRとRACのURIは相関がなかった。dPDの安静時振戦と固縮の重症度は、PPでのDATの低下が関与していたが、D2RおよびA1AR・A2ARは有意な関連を見いだせなかった。被殻のA2ARとD2R、シグマ1受容体分布は非対称なドパミン減少を是正する方向で代償している。複数の神経系の代償が存在し、その関与の程度に個体差があるため、一定の傾向が示されなかったのかもしれない。
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日本医科大学医学会雑誌
巻: 10 ページ: in press
PET Journal
巻: No 22(summer) ページ: 44-46
臨床放射線
巻: 58 ページ: 1319-1324
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