研究課題/領域番号 |
23591288
|
研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
豊田 一則 独立行政法人国立循環器病研究センター, 脳血管内科, 部長 (50275450)
|
研究分担者 |
小久保 喜弘 独立行政法人国立循環器病研究センター, 予防健診部, 医長 (20393217)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 脳血管障害 / 慢性腎臓病 / 頸動脈硬化 / rt-PA静注療法 / 脳腎連関 |
研究概要 |
(1)一般住民における慢性腎臓病(CKD)と頸動脈硬化病変:当施設の予防検診部が主体となって遂行する疫学研究である吹田研究に2002-2004年に登録された、都市部一般住民3446例(年齢35-93歳、男性1602例/女性1844例)を対象に、頸動脈エコー検査での最大IMT値、狭窄(頸動脈の面積狭窄率25%以上)を頸動脈硬化の指標とした。腎機能カテゴリーは糸球体濾過率(eGFR)で4群 (≧90 mL/min/1.73m2 /60-89 /50-59 /<50) に分け、後2群をCKDとした。CKDを13.2%(男性16.2%、女性10.5%)に認めた。最大IMT値はeGFRの低下に伴い、女性では有意に厚く(p=0.023)、男性でもその傾向を認めた(p=0.095)。狭窄もeGFRの低下に伴い増加し、eGFR<50群の≧90群に対するオッズ比は1.9(95%CI:1.2-3.1)であった。CKDが頸動脈硬化の危険因子であることを、明らかにした。(2)急性期脳卒中患者におけるCKDと脳卒中重症度・転帰:当施設に入院した急性期脳卒中患者連続例のCKDの頻度や転帰との相関関係を調べた。CKDは脳梗塞患者の46%、脳出血患者の39%を占め、とくにアルブミン尿の存在が入院時神経学的重症度に関連することを、明らかにした。(3)rt-PA静注療法を受けた脳梗塞患者におけるCKDと治療効果:超急性期にrt-PA静注による血栓溶解療法を受けた脳梗塞患者578例のうち186例(32%)にeGFR <60 mL/min/1.73m2の腎障害患者を認め、これらの患者は多変量解析にても早期頭蓋内出血や3か月後の死亡率、自立困難な転帰不良に独立して関連することを、明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)一般住民における慢性腎臓病(CKD)と頸動脈硬化病変:当初計画のH23年度計画に記載した研究内容を、おおむね施行できた。研究経過を、当施設の尾原医師が国内学会、国際学会で発表予定である。H24年度の研究計画に挙げたCKD病期と血圧カテゴリーとの交互作用について、基礎調査を開始した。(2)急性期脳卒中患者におけるCKDと脳卒中重症度・転帰:当初計画のH23年度計画に記載した研究内容を、おおむね施行できた。(3)rt-PA静注療法を受けた脳梗塞患者におけるCKDと治療効果:当初計画のH23年度計画に記載した研究内容を、おおむね施行できた。研究成果を、当施設の永沼医師が英文原著として発表した。一連の研究成果をもとに、主任研究者の豊田が脳卒中医学における脳腎関連に関するコメントをNeurology誌に発表した(Neurology 2012, in press)。同じく豊田が編集者となって、脳卒中医学における脳腎関連を主題とした英文教科書の作成を開始した(Karger社)。
|
今後の研究の推進方策 |
(1)一般住民における慢性腎臓病(CKD)と頸動脈硬化病変:吹田研究に登録された上記住民3446例を対象に、超音波検査諸値に及ぼすCKD病期と血圧カテゴリーとの交互作用の影響を調べる。血圧カテゴリーは健診時血圧の平均値から至適血圧/正常血圧/正常高値血圧/高血圧(2009年日本高血圧学会治療ガイドライン基準)の4群に分類する。(2)観察研究の登録を継続し、解析を開始する。具体的には脳梗塞患者、脳出血患者に分けて、多変量解析を用いてCKDと各評価項目の相関関係を調べる。CKD患者の内科治療内容(脳保護薬、抗血栓薬など)と治療成績、治療副作用の関係も解明する。(3)rt-PA静注療法を受けた脳梗塞患者におけるCKDと治療効果: 上記のrt-PA静注を受けた脳梗塞患者578例のうち、維持血液透析患者を抽出してその臨床像を調べ、同期間に脳梗塞で入院し、rt-PA静注療法を受けなかった透析患者との転帰を比較する。rt-PA静注療法とエダラボンによる脳保護の併用療法の治療効果に及ぼす腎機能障害の併用効果を調べる。米国Hart教授と研究打ち合わせを行い、SAMURAI rt-PA Registryを含めた国内外のいくつかのrt-PA登録研究での透析患者rt-PA治療成績をまとめる。とくに透析患者へのrt-PA治療の是非は全く明らかになっておらず、今回の研究成果をもとに国際的な共同調査を行い、透析患者に対する同治療の治療指針作成に寄与する。得られた研究成果の情報発信、英語論文化を行う。研究成果をもとに、CKD患者の脳卒中治療指針作成に寄与する。上記の英文教科書を完成させる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
三つの研究のいずれも、既存のデータベースなどを利用して患者を抽出している。そのためデータベース作成への費用は不要であるが、データベース管理維持費が必要である。その他、患者血液検査・生理機能検査(超音波検査)などの一部費用を負担、ないしこれらの検査の遂行に関連する雑費を支払う。データ収集、データ解析に必要な統計ソフト、また研究協力者への謝金などを支払う。研究成果を国内外に積極的に発信するため、会議や学会への参加に必要な諸費、論文作成に関連する雑費などを支払う。
|