研究課題/領域番号 |
23591291
|
研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
藤田 征弘 旭川医科大学, 医学部, 助教 (20451461)
|
研究分担者 |
本庄 潤 旭川医科大学, 医学部, 特任助教 (30451462)
|
キーワード | GIP / インクレチン / 膵島 / α細胞 |
研究概要 |
消化管から分泌されるGIPとGLP-1はインクレチンホルモンとして膵β細胞からの血糖依存性インスリン分泌に重要な役割を果たしてい る。研究代表者らは、新しい‘short-form’ GIPの発現を膵α細胞で確認し,パラクリンでインスリン分泌にかかわっていることを明 らかにした。本研究の目的はshort-form GIPのインクレチンとしての作用やその分泌機構を生理学的に明らかし、既知のGIPおよびGLP -1との相違を明らかにすることである。加えて、short-form GIPのアミノ酸を改変し、GLP-1の受容体にも結合するdual agonistを作 成する。 (1) DPP-4 耐性short-form GIPの治療薬としての可能性の検討:糖尿病モデル動物においてDPP-4 耐性short-form GIPがインスリン分 泌促進、β細胞の増殖、アポトーシスの抑制をどのように促すか、機構の解明を行う。Short-form GIPがGIPの膵外感受性臓器である 脂肪細胞や骨細胞にどのように作用するか、GIP1-42と比較検討を行う。 (2) short-form GIPの生理学的,病態生理学的影響の検討:どのような分泌刺激(栄養素,ホルモンなど)でshort-form GIPが分泌さ れるか、単離膵島を用いて検討する。また、正常と糖尿病状態において発現・分泌がどう変化するか、さらに糖尿病の病態との関わり を明らかにする。 (3) Dual agonistの検索と培養細胞および糖尿病動物での検討:GIPのvariantがGLP-1受容体にも結合するとの報告もあるが、in vitr o, in vivoでのインスリン分泌促進効果の検討はあまりなされておらず、β細胞株,単離膵島を用いGIP、GLP-1と比較する。さらに糖 尿病モデル動物を用い、糖尿病治療薬としての有用性を検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DPP-4 耐性short-form GIPの治療薬としての可能性の検討: GIP 1-30のアミノ酸を一部改変したcompound Bを作成し、in vitroでGIP受容体に結合し、細胞内cAMPを増加させることを明らかにした。マウスに投与した実験において、compound Bはlong-acting agonistとしての作用を認め、投与1時後に有意な血中濃度の上昇を示し、さらに投与1日後血中濃度が頂値となり、約10日間にわたり有効な血中濃度の持続を確認した。1週間1回高用量のcompound Bを正常マウスや高脂肪食肥満マウスに投与しても、体重増加を認めなかった。しかし、経口ブドウ糖負荷による耐糖能はやや悪化を認めた。この悪化の原因は、高濃度GIP濃度暴露による受容体のdown-regulationと考えた。そこでつぎに、低用量を3日間隔で投与した。この実験においても、正常マウスに体重増加を引き起こさなかった。一方、低用量STZマウスでは、compound Bは明らかに、高血糖への進展を抑制し、STZ開始1ヶ月後のHbA1c、随時血糖、腹腔内ブドウ糖負荷試験における耐糖能を有意に無治療STZ群に比較し改善させた。 short-form GIPの生理学的、病態生理学的影響の検討: 研究代表者らは糖尿病状態において膵島においてα細胞領域の拡大と細胞数の増加を認め、その一因が糖尿病状態におけるα細胞の増殖亢進であることを報告している。(Takeda T, Fujita Y et al. Diabetologia 2012.) 糖尿病状態において、膵GIPがグルカゴンと共に過剰発現し、膵島内GIP受容体の発現が逆に低下していることを見いだした。またその変化がDPP-4阻害薬により改善されることも確認した。以上から、本研究は計画通り概ね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
DPP-4 耐性short-form GIPの治療薬としての可能性の検討: Compound Bによる治療介入試験において、Low-dose STZ糖尿病におけるin vivoのデータは、上記のごとく出揃っており、回収した血液サンンプルについて、インスリンやグルカゴンをEIAにて測定する。マウスは屠殺後、膵臓を摘出し固定しており、インスリン、グルカゴンやアポトーシスや増殖マーカーについて組織学的検討を行う。さらに、高濃度GIPに暴露した正常マウスや高脂肪食マウスの膵臓組織も回収・固定しており、今後GIP 受容体などにつき組織的な検討に用いる。 short-form GIPの生理学的、病態生理学的影響の検討: 膵GIPに加え、その標的分子であるGIP受容体の発現を正常、糖尿病モデル、治 療介入群で比較検討を引き続き行う。short-form GIPの分泌機構に関しては、単離膵島を用いて検討する。また組織で認められた変化について、膵臓からペプチドを酸エタノール法で抽出し、我々の受容体/CREルシフェラーゼ共発現細胞を用いたバイオアッセイにて、膵含有GIPについて測定する。 Dual agonistの検索と培養細胞および糖尿病動物での検討: DPP-4耐性遅効型GIP作成のノウハウを生かし、dual agonistを設計・作成し、実験に用いる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
DPP-4 耐性short-form GIPの治療薬としての可能性の検討:正常マウスおよび糖尿病モデルマウスの購入、特殊飼料の購入。インスリ ン、グルカゴン測定の為のELISAキットの購入。血糖、HbA1c測定チップの購入。免疫組織に必要な抗体の購入。単離膵島またはβ細胞 株などの培養実験に必要な酵素、培地、血清、成長因子などの購入する予定である。 short-form GIPの生理学的、病態生理学的影響の検討:正常マウスおよび糖尿病モデルマウスの購入する。薬物治療介入に必要な、薬 品(インスリン、DPP-4阻害薬、exendin-4など)の購入も必要である。short-form GIPを含む活性型GIP測定系は、ほぼ確立されてお り、ヒト検体での測定結果について国内外の学会で発表予定であり、旅費を計上予定である。 Dual agonistの検索と培養細胞および糖尿病動物での検討:ペプチド合成に関わる費用に使用する予定である。
|