研究課題/領域番号 |
23591293
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山田 哲也 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90400374)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肥満 / 糖尿病 / エネルギー代謝 / 自律神経 |
研究概要 |
アデノウイルスベクターを用いてマウスの肝臓選択的にGKを過剰発現させたところ、発現量依存的に、熱産生組織である褐色脂肪組織(brown adipose tissue; BAT)において、uncoupling protein-1(UCP1)などの熱産生関連遺伝子の発現抑制が生じ、適応熱産生が低下し、体重増加が促進した。この肝臓GK-BAT組織間連関は、神経切断実験や脳内諸核の発現検討により、迷走神経肝臓枝を含む神経経路を介して生じることが示唆された。さらに、肝GK発現によっても、摂餌量には有意な変化は見られず、レプチン投与による視床下部におけるNPY発現抑制・POMC発現亢進作用には影響を与えなかったが、延髄吻側縫線核におけるc-fos発現は著明に減少し、中枢レプチン作用のうちエネルギー消費亢進作用を選択的に抑制することも明らかとなった。肝での糖代謝の変化が、BATにおける熱産生を調節していること、および、その機序として臓器間神経ネットワークが関与していることが明らかとなった。最近、ヒト成人においても代謝活性のあるBATが存在し、BATの量はBMIと逆相関の関係にあることなどが報告された。肥満患者の肝臓GKが上昇していること併せると、ヒト成人においても、この肝臓-BAT組織間連関機構に介入し、肥満者では機能低下しているBATを再活性化することは、過栄養時代における肥満症治療のターゲットになりうるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに計画した研究の実際の手技は、既に当研究室で確立しており、実験結果が順調に得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
マウスには高脂肪食による"肥満のなりやすさ"に系統差が存在することが知られており、代表的な易肥満性の系統としてC57BL/6マウスが、難肥満性の系統としてSWR/Jマウスがある。(1)高脂肪食負荷による肝臓のグルコキナーゼの誘導の程度を、C57BL/6マウスとSWR/Jマウスで比較検討する。(2)shRNAを用いたノックダウン実験高脂肪食負荷を行ったC57BL/6マウスに、グルコキナーゼに対するshRNAをアデノウイルベクターを用いて肝臓選択的に導入する。このグルコキナーゼノックダウンマウスにおいて、 (2)-1:褐色脂肪組織の組織学的検討を行う。またmRNAを精製し、定量的RT-PCR法を用いて、熱産生関連分子(UCP1、PGC-1 αなど)の検討を行う。 (2)-2:norepinephrine投与により褐色脂肪組織依存性の酸素消費量増加の程度を検討する。(2)-3:縫線核のニューロンの活性を、c-fos mRNA量を指標に検討する。(2)-4:体重増加の経時的変化を観察する。(3)肝臓のグルコキナーゼが難肥満性のSWR/Jマウスのエネルギー代謝に及ぼす影響を検討する。アデノウイルスベクターを用いてグルコキナーゼ遺伝子を肝臓に導入されたSWR/Jマウスにおいて、(3)-1:褐色脂肪組織の組織学的検討を行う。またmRNAを精製し、定量的RT-PCR法を用いて、熱産生関連分子(UCP1、PGC-1αなど)の検討を行う。(3)-2:norepinephrine投与により褐色脂肪組織依存性の酸素消費量増加の程度を検討する。(3)-3:縫線核のニューロンの活性を、c-fos mRNA量を指標に検討する。(3)-4:体重増加の経時的変化を観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の遂行にあたって多くの研究費を使用するのが、実験動物およびその飼育費用である。また、脂肪を大量に含んだ特殊飼料の負荷により食餌性の肥満マウスを作成するが、この飼料は特別注文になるため、通常の飼料の5倍から10倍と非常に高価である。したがって、消耗品費の中でも実験動物関連に多くを充てる計画である。また、市販のウイルスベクター作成キットなどは非常に高額であり、試薬の占める割合も相応に計画した。
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