研究課題
通常食下で飼育したマウスの肝臓にGKを遺伝子導入(GKマウス)し、肝臓から発信される臓器間相互作用の解析を試みた。その結果、予想通りGK遺伝子導入7日後には解糖系酵素の誘導やグリコーゲン蓄積の増加などが認められたが、褐色脂肪のUCP1(uncoupling protein-1)など熱産生関連遺伝子の発現が低下し、その熱産生が抑制されていることがわかった。さらに、肝GK発現の亢進が引き金となって生じた代謝シグナルが迷走神経求心路を介して脳に伝達され、その結果交感神経活性の低下→褐色脂肪の適応性熱産生の低下が引き起こされ、最終的には体重の増加に繋がることが判明した。次に、過栄養に対するフィードバック機構の代表ともいえるレプチン作用と肝GK-脳-褐色脂肪と連なるフィードフォワード機構との関連を検討した。通常食で飼育したGKマウスにレプチンを投与すると、その摂食抑制効果は保たれているものの、交感神経の活性化を介する褐色脂肪の適応性熱産生亢進作用は抑制されていた。さらに詳細な検討を行ったところ、その抑制は褐色脂肪に至る交感神経の起始核である延髄の縫線核付近で生じていることが判明した。さらに、マウスの系統間で高脂肪食負荷による体重増加の程度と肝GK発現との間に正の相関があることを見出した。その因果関係を検討する為に、肥満抵抗性マウスへの肝GK遺伝子導入実験や易肥満性マウスへの肝GKノックダウン実験を行ったところ、前者では褐色脂肪の熱産生が抑制され体重増加が促進し、逆に後者では褐色脂肪の熱産生が亢進し体重増加が抑制された。これらにより、このシステムの働きの違いが、肥満のなりやすさに関するマウスの系統間の違いをも説明しうることが、明らかとなった
1: 当初の計画以上に進展している
現在までの成果を2012年12月に論文発表した。
これまでの研究によって見出した、肝-脳-褐色脂肪と連なる新規臓器間神経ネットワークの分子メカニズムの解明を進める。肝臓にグルコキナーゼを発現させることによって生じる遺伝子発現の差異を網羅的に解析する。
該当なし
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