研究課題
「個体が過栄養にさらされた際、むしろエネルギー蓄積を促進する方向に働くことで脂肪蓄積(体重増加)を促進するポジティブフィードバック機構が存在する」という仮説のもと検討を進め、以下の知見を見出した。エネルギー摂取の増加により、肝でのグルコキナーゼ発現上昇が生じ糖代謝が亢進すると、肝臓→脳→褐色脂肪へと神経シグナルが伝わって、褐色脂肪による熱産生が低下し体重増加が生じた。以上より、このシステムはエネルギー摂取増加に呼応するエネルギー消費の低下を司っており、その観点からは個体レベルでのポジティブフィードバック機構と考えられた。一方、個体は、過栄養摂取に対応し、体重の恒常性維持に寄与するネガティブフィードバック機構も備えている。本研究で見出したポジティブフィードバック機構は、ネガティブフィードバック機構の代表であるレプチンの作用のうち、エネルギー消費促進作用を選択的に抑制することも明らかになり、最終的な体重増加につながるメカニズムの詳細も明らかとなった。食事を満足に得ることのできなかった時代に生存に有利に働いたと考えられるこのシステムは、皮肉にも飽食の現代において、肥満に舵を切るメカニズムとして働いていると想定される。さらに、このシステムの働きの違いが、肥満のなりやすさに関するマウスの系統間の違いをも説明しうることも解明した(Cell Metab, 2012. 16(6): p. 825-32)。最終年度は、肝臓での代謝変化から神経シグナルの発信につながる分子メカニズムを解明すべく、初代培養肝細胞から分泌される因子の探索に向けて、新規に解析(トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボロームレベル)を開始し、実験系の確立に成功した。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件)
Am J Physiol Endocrinol Metab
巻: 1:305(5) ページ: E641-E648
10.1152/ajpendo.00120.2013
BMC Neurol
巻: 9:13(1) ページ: 76
10.1186/1471-2377-13-76
Nat Commun
巻: 13:4 ページ: 2316
10.1038/ncomms3316
巻: 304(3) ページ: E301-E309
10.1152/ajpendo.00388