研究課題/領域番号 |
23591295
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柴田 宏 群馬大学, 生体調節研究所, 准教授 (20235584)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | インスリン / 活性酸素 / レトロマー複合体 / タンパク分解 |
研究概要 |
インスリン作用の"負の側面"ともいえるグルコーストランスポーター(GLUT4)分解促進作用に関して,最近,我々は,インスリンが脂肪細胞において,活性酸素の産生促進を介してCK2キナーゼ依存性にレトロマー複合体の機能を阻害することにより,細胞内におけるGLUT4のソーティングをTGN方向(リサイクル)からリソソーム方向(分解)へスイッチし,GLUT4の分解を促進する,というモデルを支持する成績を得た。本年度は,この作業仮説の検証を様々な手法を用いて行い,以下の点を明らかにした。1.インスリンによる過酸化水素産生促進作用にホスファチジルコリン(PC)特異的ホスホリパーゼCが関与することを明らかにし,さらにPC水解産物であるホスホリルコリンの添加によりNADPHオキシダーゼが活性化されることを示し,ホスホリルコリンが細胞内シグナルとして機能することを明らかにした。2.インスリンおよび過酸化水素がホスファターゼPP2Aを抑制することを明らかにし,これらの刺激によりCK2活性が相対的に優位となる可能性が示唆された。3.レトロマー複合体コンポーネントであるVps35がCK2の基質であり,Vps35のリン酸化によりレトロマー機能が阻害されること,Vps35-S7A変異によりインスリンのGLUT4分解促進作用が阻害されることを明らかにした。以上の結果は,我々の当初の作業仮説を支持するものであり、インスリンの新たな作用機構に関してさらに進展がみられた。。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
作業仮説の検証上,大きな課題の一つであったPC-PLC活性化とNADPHオキシダーゼ活性化をつなぐメカニズムが解明される可能性が出てきた点が非常に評価される。この成果により,インスリン作用の未知のシグナルが明らかになる可能性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の方向として、以下の点を明らかにする必要がある。(1)インスリンがPC-PLCを活性化する機構,(2)ホスホリルコリンがNADPHオキシダーゼを活性化する機構,(3)過酸化水素がプロテインキナーゼCK2を活性化する機構,(4)CK2がレトロマーを抑制する機構,(5)レトロマーが膜から解離する機構。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は,まず,インスリンによるNADPHオキシダーゼ活性化機構についてさらに検討する。23年度に,PC-PLC活性化によるPC水解産物であるホスホリルコリンがNADPHオキシダーゼを活性化する無細胞実験系を確立したので,この実験系を用いて詳細な検討を行う。第2に,Vps35のリン酸化機構について,CK2およびPP2Aの両面からさらに詳細を検討する。また,これらの成果を論文に発表する予定である。
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