研究課題
我々は、心血管疾患の重大なリスク要因となる高脂肪食に伴うメタボリックシンドロームの病態解明を目指して、生体分子イメージング手法を確立し、食事由来脂質の全身性の影響、肥満に伴う腸内細菌叢の変化、脂肪組織の機能異常と局所免疫の賦活化を明らかにしてきた。たとえば、肥満した脂肪組織や腸管では、M1マクロファージ、CD8陽性T細胞といった炎症性細胞が賦活化されて、脂肪組織炎症と糖尿病病態を起こしている。我々は、生体分子イメージング手法を脂肪組織に応用し、初期の炎症過程を明瞭に可視化し、肥満脂肪組織が炎症の場であることを直接証明しており、その過程では、脂肪組織にCD8陽性T細胞が浸潤していることを可視化・証明した。本研究ではさらにそれだけでなく、脂肪組織には多くの制御性B細胞が多量に存在していることが明らかになった。このB細胞(脂肪Breg)は通常のB1、B2細胞とは表面マーカーの発現が異なり、新たなサブセットの細胞であることが示された。サイトカイン産生能の検討では、脂肪BregはIL-10を無刺激でも高発現していた。これは、今まで報告されている制御性B細胞とは異なっている点であり、脂肪Bregの特異な形質を示している。B細胞特異的IL-10欠損マウスを作成したところ、脂肪組織の炎症が惹起されインスリン抵抗性が増悪していた。つまり、脂肪Bregは脂肪組織の炎症を負に制御していることが示された。脂肪Bregは皮下脂肪に特に多く存在しており、皮下脂肪の間質の30%を占めている。そして、このB細胞は肥満個体では質的・量的、ともに減少していた。肥満個体における脂肪組織炎症およびインスリン抵抗性の一部は、脂肪Bregの減少によって説明されると考えられた。以上の結果は2013年Cell Metabolismに掲載された。
すべて 2013
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Cell Metabolism
巻: 18 ページ: 759-766
org/10.1016/j.cmet.2013.09.017