研究課題/領域番号 |
23591300
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
飯塚 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (40420244)
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研究分担者 |
矢作 直也 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (60420246)
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キーワード | メタボリックシンドローム / インスリン抵抗性 / 高血圧 / 交感神経活動亢進 / 原因候補遺伝子 / 高血圧自然発症ラットSHR / ノックアウトマウス / 尿崩症 |
研究概要 |
【目的】メタボリックシンドローム(MetS)のモデル動物であるSHRの原因候補遺伝子として同定したKAT-1 (kynurenine aminotransferase-1) のノックアウト(KO)マウスを作製し、KAT-1の生理機能とMetSの成因を探る。【方法】発生工学的手法を用い、KAT-1を完全欠損するKOマウスを作製した。血圧、カテコラミン分泌、糖脂質代謝、インスリン感受性、体重、飲水量、尿量等の評価、また、12週間高塩食、高脂肪食負荷下における解析も行った。 【成績】1)KAT-1のKOマウスの各組織において、KAT-1の発現がmRNAおよび蛋白レベルで欠損していることを確認した。KAT-1のKOマウスは正常に出産・発育し、SHRと同様に、2)普通食下において、tail-cuff法およびtelemetryシステム法により有意な血圧と脈拍の上昇を示し、12週間高塩食下において、血圧の更なる上昇を示し、この傾向はマウスの交感神経活動が高まる夜間により顕著に認めた。さらに、3)高塩食下における24時間蓄尿中のカテコラミン分泌の亢進を呈し、4)血中アルドステロン濃度の亢進・レニン活性の低下を示した。5)普通食下において、空腹時血糖値の有意な上昇とインスリン負荷試験によるインスリン抵抗性の亢進を示し、高脂肪食下における空腹時血糖値の更なる上昇を示した。そして、6)活動度の増加に伴い、高脂肪食下における体重・脂肪組織重量の増加率の減少を示した。一方、7)SHRには認められない多飲・低張性多尿などの尿崩症症状を呈し、8)多飲・多尿は日中・夜間とも見られ、夜間により顕著に認めた。9)飲水制限やバソプレシン投与により、尿量の減少・尿浸透圧の上昇を認めた。【結論】SHRにみられる多様な病態の背景にKAT-1の異常が深く関わる可能性が再確認され、それらの異常がラットとマウスの種差を越えてKAT-1の異常によって引き起こされていることが示され、KAT-1はMetSの新たな治療標的となる可能性が強く示唆された。
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