研究課題/領域番号 |
23591302
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂野 僚一 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80597865)
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研究分担者 |
大磯 ユタカ 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40203707)
有馬 寛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50422770)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | PTP1B |
研究概要 |
本研究では、視床下部におけるインスリンおよびレプチンシグナルを阻害するPTP1Bの発現調節機構の解析を目的としている。過去の報告から、視床下部PTP1B発現量の多寡が体重調節の鍵となることが知られており、本研究の成果が肥満症発症機序の解明および治療法への確立へ貢献すると考えられる。 高脂肪食投与における肥満状態では、視床下部で慢性的な炎症が生じることが知られており、炎症性サイトカインのTNFαは肥満時に血中濃度が上昇し、高脂肪食投与下では視床下部において発現の増加が報告されているため、肥満時に増加するTNFαが視床下部PTP1Bの発現に直接影響を与えることでレプチン抵抗性を来すのではないかと仮説を立て以下に示す実験を行った。 生後16日齢のラットより視床下部を取り出し視床下部器官培養を施行した。視床下部切片を作製後、無血清培地で48時間培養し、メディウム中にTNFαを加えて更に培養を行った。この際、TNFαの濃度および培養時間を変えて検討した。視床下部切片からRNAおよび蛋白を抽出し、RT-PCR法及びウエスタンブロット法でPTP1Bの発現を評価するとともに免疫沈降法を用いてPTP1Bの活性を測定した。続いてNFkBのリン酸化阻害剤を投与してPTP1Bの蛋白発現を検討した。 実験の結果、(1)TNFαはPTP1BのmRNA、蛋白発現、活性を時間、濃度依存的に増強した。(2)TNFαはNFkBのリン酸化を時間、濃度依存的に増強した。(3)TNFα投与に伴うPTP1Bの蛋白発現増加はNFkB阻害剤投与によりコントロールレベルまで減弱した。 実験結果より、肥満時に増加するTNFαが、その受容体の下流にあるNFkBのリン酸化を増強することで、視床下部PTP1Bの発現や活性を増強し、中枢におけるレプチン抵抗性の一因となる可能性が示唆された。尚、本研究成果はRegul Pept.に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、視床下部におけるPTP1Bの発現調節機構の解析を目的としている。過去の報告から、視床下部PTP1B発現量の多寡が体重調節の鍵となることが知られており、肥満時に増加する因子の中に視床下部PTP1Bの発現調節に関与するものがあるのではないかと考え研究を進めている。 上述の候補因子には、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-4、IL-1β)、代謝マーカー(レプチン、インスリン、血糖、脂肪酸)および視床下部における小胞体ストレスが挙げられる。これらの因子が視床下部PTP1B発現に与える影響を視床下部器官培養法および分子生物学的手法を用いて検証し、視床下部PTP1Bの発現調節機構を明らかにする。 研究実績の概要で述べたように、肥満時に増加するTNFαが、その受容体の下流にあるNFkBのリン酸化を増強することで、視床下部PTP1Bの発現や活性を増強し、中枢におけるレプチン抵抗性の一因となる可能性を示唆する結果を得た。 これらの成果は2012年2月のRegulatory Peptide 174(1-3):58-64に掲載され、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、視床下部PTP1Bの発現調節候補因子である、炎症性サイトカイン(TNF-α、IL-6、IL-4、IL-1β)、代謝マーカー(レプチン、インスリン、血糖、脂肪酸)および視床下部における小胞体ストレスに着目し、これらの因子が視床下部PTP1B発現に与える影響を視床下部器官培養法および分子生物学的手法を用いて検証する。 今年度は特に、炎症との関わりの深い小胞体ストレスに着目し実験を進める予定である。近年、PTP1Bを欠損させると小胞体ストレスが軽減するとの報告があることから、小胞体ストレス下で生じる視床下部のインスリンおよびレプチン抵抗性がPTP1B KOマウスとWTマウスでどのように異なるのか比較検討する。 今年度早期に、連携研究者であるBenjamin G. NeelからPTP1B whole body KO マウスの当研究施設への移譲を行い、今後は小胞体ストレスが視床下部PTP1B発現に与える影響に加えて、小胞体ストレス下で生じる視床下部のインスリンおよびレプチン抵抗性にPTP1Bがどの程度寄与するのか詳細に検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
設備備品については既に当大学内で本研究を施行する上で十分な配置がなされているため経費に計上せず、研究費用の多くを消耗品に計上した。消耗品費として、マウスの購入や遺伝子改変マウスの輸送などに必要な実験動物費、視床下部器官培養やウエスタンブロット法、RT-PCR法などに必要な実験用ディスポーザブル器具の購入費、および試薬と薬品の購入費を算定し、それぞれ実験動物費用に150,000円、実験器具費用に800,000円、試薬購入費用に400,000円、国内外の学会発表や雑誌投稿料として、国内学会発表費用に50,000円、国外学会発表費用に100,000円、雑誌投稿料に50,000円を使用予定である。
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