研究課題/領域番号 |
23591302
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
坂野 僚一 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (80597865)
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研究分担者 |
大磯 ユタカ 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40203707)
有馬 寛 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50422770)
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キーワード | エネルギーバランス / PTP1B |
研究概要 |
視床下部PTP1Bの発現調節因子候補であるTNFα、IL-6およびER stressについて検討を行った。 TNFαについて:視床下部器官培養を用いて、生後16日齢のラットより350μmの視床下部切片を作製し無血清培地で48時間培養後、メディウム中にTNFαを加えて所定の時間培養し、PTP1Bの発現および活性を評価した。その結果、TNFαは時間および濃度依存性にPTP1BのmRNA、蛋白発現および活性を上昇させることが明らかとなった。更に、作用機序を検討したところ、TNFαシグナル下流のNFkBを介したものであることが明らかとなった。既報によると、高脂肪食投与に伴う肥満では視床下部においてTNFαの発現増強を来すことが知られており、増加したTNFαがNFkBを介してPTP1Bの活性および発現を増強し、レプチンシグナルを阻害することでレプチン抵抗性を惹起する機序が考えられた。これらの知見を国内外の学会で報告すると共に、Regul Pept. 2012 Feb 10;174(1-3):58-64.で報告した。 IL-6について:TNFαと同様の実験系で解析中であるが、IL-6 100ng/ml 24時間の培養でPTP1BのmRNA、蛋白発現および活性が増加することを確認した。 ER stressについて:TNFαと同様の実験系で、ER stressorとしてthapsigarginを用いて検討するもPTP1Bの発現に有意な影響を及ぼさないことが確認された。 上記実験に加えて、連携研究者であるBenjamin G. NeelからPTP1B whole body KO マウスの移譲を遂行し、現在繁殖中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
視床下部PTP1Bの発現調節因子について検討を行ったところ、炎症性サイトカインであるTNFαおよびIL-6は視床下部PTP1Bの発現および活性を増強するものの、ER stressは有意な影響を与えないことが明らかとなった。特にTNFαについてはNFkBを介して視床下部PTP1Bの発現および活性の増加を来す結果が得られたことから査読のある英文雑誌に投稿し、Regulatory Peptideに掲載された。さらに、PTP1B whole body KOマウスについて、国外研究室から当研究室への移譲が無事終了し、現在順調に繁殖が進んでいることから研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
炎症性サイトカインであるIL-6がPTP1Bの発現および活性に与える影響について、時間および濃度依存性の有無に加え、PTP1B発現増加の分子生物学的機序について更なる解析を進める。また、炎症性サイトカイン以外でPTP1Bの発現調節に影響を与える因子についても検討を進める。 PTP1B KOマウスの視床下部器官培養を用いて、PTP1B発現調節因子によるインスリンおよびレプチン抵抗性がPTP1Bの有無によりどのような影響を受けるのか検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ノックアウトマウスの維持および繁殖。 視床下部器官培養、ウエスタンブロット法、免疫沈降法、PTP1B活性測定、RT-PCR、レプチン等の試薬購入、学会発表および論文投稿の費用。
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