研究概要 |
ミトコンドリア糖尿病患者2名、1型糖尿病患者2名、インスリン分泌低下2型糖尿病患者1名から疾患特異的iPS細胞の樹立を試みた。 腹部皮膚由来の線維芽細胞にOCT4, SOX2, KLF4, c-MYCを発現する4種類のレトロウイルスベクターを感染させ、ヒトES細胞様コロニーをピックアップし患者一人当たりから4~12クローンを得た。AlP活性と未分化マーカー(SSEA3, SSEA4, TRA1-60, TRA1-80, NANOG)の発現を確認した。浮遊培養にて胚様体を形成後、接着培養した細胞において、内胚葉(FOXA2), 中胚葉(αSMA), 外胚葉(β3-tubulin)陽性となる細胞の存在を確認しvitroにおける多分化能を確認した。また、SCIDマウスへの移植により形成される奇形腫においても内胚葉(腸管), 中胚葉(軟骨),外胚葉(色素上皮・神経管)等の形成を確認しvivoにおける多分化能も確認できた。継代は80継代以上可能であった。以上より、種々の糖尿病患者から代謝状態に関わらずiPS細胞の樹立が可能であることを示すことが出来た。 ミトコンドリア糖尿病では、個々の細胞において、正常なミトコンドリアゲノム(3243A)と異常なミトコンドリアゲノム(3243G)を種々の割合で保有しており(ヘテロプラスミー)、一定の閾値を超えると障害が生じると考えられている。そこで、患者血液・線維芽細胞・樹立したiPSクローン(Mt-iPS)における変異率をInvader法により検討したところ、患者2人とも血液細胞、線維芽細胞における変異率は約20%であるのに対し、樹立したiPS細胞においては変異の消失したクローンと変異の増加したクローンとに分かれていた。
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