研究課題
様々な原因の糖尿病患者(ミトコンドリア糖尿病患者2名、1型糖尿病患者2名、インスリン分泌低下2型糖尿病患者1名)から疾患特異的iPS細胞を樹立することに成功した。ミトコンドリア糖尿病では、個々の細胞において、正常なミトコンドリアゲノ(3243A)と異常なミトコンドリアゲノム(3243G)を種々の割合で保有しており、一定の変異遺伝子比率がある閾値を超えると障害が生じると考えられている。患者血液・線維芽細胞・樹立したiPSクローンにおける変異率を検討したところ、血液細胞、線維芽細胞における変異比率は約20%であるのに対し、樹立したiPS細胞においては変異比率が検出感度以下となるクローンと変異比率が高いクローンとが得られ、変異比率の2極分化が生じていた。患者由来線維芽細胞の検討から初期化に関連した現象と考えられた。各iPS細胞クローンを継代培養した結果、変異の消失したクローンにおいては変異が復活することはなく、変異が多いクローンにおいても変異比率が減少したり増加することはなく一定の変異比率を維持することが観察された。また、変異比率がiPS細胞からの分化において変化するかを胚様体形成法により検討した。その結果、変異の消失したクローンにおいては変異が復活することはなく、変異が多いクローンにおいても変異比率が減少したり増加することはなく一定の変異比率を維持することが観察された。以上の知見から、変異を消失したミトコンドリアiPS細胞を用いればリスクを伴う遺伝子改変を行わずに自家移植による治療が可能であること、また同一ゲノムを有しながら大幅に変異比率が異なるミトコンドリアiPS細胞を分化させた場合、各組織におけるミトコンドリア機能の病態生理学的意義をヒト細胞において検討することで新たな治療法の開発に結び付く可能性を見出すことができた。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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10.1089/scd.2013.0113.
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