研究課題/領域番号 |
23591312
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
西川 武志 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 准教授 (70336212)
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研究分担者 |
近藤 龍也 熊本大学, その他の研究科, 助教 (70398204)
久木留 大介 熊本大学, 医学部附属病院, 助教 (10555759)
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キーワード | 糖尿病 / 糖尿病合併症 / ミトコンドリア / 活性酸素 |
研究概要 |
申請者らは糖尿病血管合併症発症機序として「高グルコースによるミトコンドリア由来活性酸素過剰産生」の意義を提唱している。本年度はこの仮説をさらに発展させたものとして、主に以下の1-4の実験を行った。1. 培養血管内皮細胞において、正常酸素濃度下にもかかわらず25 mMグルコース培養では5.5 mMグルコース培養に比し、細胞内低酸素状態が誘導されることを、低酸素プローブPimonidazole HCl染色とHIF-1発現、VEGF発現によって確認した。2. 培養血管内皮細胞において、低酸素濃度下培養は25 mMグルコース培養による細胞内低酸素誘導を更に増強した。3. 培養血管内皮細胞において、低酸素濃度下培養はミトコンドリア由来活性酸素を増加させることを、還元型mitotracker red probeを用いて確認した。また一方、ミトコンドリア由来活性酸素の特異的除去酵素であるMnSODの過剰発現によるミトコンドリア由来活性酸素の制御により、高グルコース培養による細胞内低酸素誘導が緩和される可能性が示唆された。4. MnSODを内皮細胞特異的に発現させたトランスジェニックマウス(eMnSOD-Tgマウス)を用いた実験において、糖尿病導入により、組織低酸素状態が誘導されること、さらにミトコンドリア由来活性酸素の制御により、糖尿病による組織低酸素誘導が緩和される可能性が示唆された。 これらの結果より、高血糖により組織内低酸素状態が誘導される可能性と、またこの低酸素状態がミトコンドリア由来活性酸素を増加させている可能性を明らかにした。後さらに詳細の機序を明らかにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者らは糖尿病血管合併症発症機序として「高グルコースによるミトコンドリア由来活性酸素過剰産生」の意義を提唱しているが、糖尿病合併症の発症機序にはまだまだ不明の点が多い。特に“metabolic memory”は合併症発症機序に残された大きなブラックボックスであり、“metabolic memory”の機序を解明することで、合併症発症機序の解明は大きく前進すると考えられている。 本研究では、糖尿病でミトコンドリアDNA傷害や組織低酸素状態が惹起されている事がmetabolic memoryの一因であり、糖尿病血管合併症発症に大きな役割を果たしているのではないかとの仮説を検証する目的として、研究を行っているが、当初の予定通り、研究はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2011-2012年度の研究によって、高血糖により組織内低酸素状態が誘導される可能性と、またこの低酸素状態がミトコンドリア由来活性酸素を増加させている可能性については、ほぼ一定の結果が得られたので、本年度はその機序の詳細について、研究を推進していく予定である。 具体的には高グルコース培養での細胞内低酸素状態誘導について、リン光プローブ法を用いて、再評価する。また、低酸素濃度培養によるミトコンドリア由来活性酸素過剰産生の機序をRieske iron sulfur protein (RISP) shRNAを用い検討する。さらに、eMnSOD Tgマウスで、腎動脈結紮を行い、低酸素によるミトコンドリア由来活性酸素過剰酸性の可能性を検討する。 これらの実験により、糖尿病合併症発症、とくにmetabolic memoryにおける高血糖による組織低酸素惹起の意義を明らかにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
リン光プローブ、RISP shRNAを初めとした実験試薬関連消耗品、培養細胞およびマウス管理費、論文作成費、成果発表のための旅費などで、間接経費と合わせて2,167,655円を予定している。
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