研究課題/領域番号 |
23591313
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
吉澤 達也 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 講師 (40313530)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | インスリン / 糖代謝 / シグナル伝達 / 糖尿病 |
研究概要 |
<目的> 腸管は、糖・エネルギー代謝に重要な組織であるが、腸管組織へのインスリン作用については十分に明らかではない。そこで、申請者らは、腸管特異的インスリン受容体ノックアウトマウスを作製し、糖・エネルギー代謝への影響を解析することとした。<研究実績>1)腸管におけるインスリン作用の解析:申請者らは、インスリン受容体ゲノムにloxP配列が導入された(IR floxed)マウスと腸管上皮細胞特異的にCre酵素を発現する(Villin-Cre)マウスを交配し、腸管特異的インスリン受容体ノックアウトマウスを作製する。平成23年度は、予定通りこのノックアウトマウスの作製とコロニーの拡大に費やされた。申請者が、留学時に作製したIR floxedマウスを米国コロンビア大学より輸入し、熊本大学動物施設に搬入した。また、Villin-Creマウスもジャクソン研究所より導入し、これらマウスを交配した。現在は、腸管特異的インスリン受容体ノックアウトマウス作製のための親マウスである、IR floxedヘテロ; Villin-Creマウス(IR(flox/+); villin-Cre)マウスのコロニーを増やしている段階である。2)インスリンシグナル伝達系について:申請者らは、野生型マウスにインスリンを投与し、経時的に十二指腸・空腸・回腸を回収、インスリン標的遺伝子、糖新生関連遺伝子、腸管由来ホルモン遺伝子等の各種遺伝子発現変化について、RT-PCR法等で検討している。この際、血清も回収しており、今後、血清中のホルモン濃度も測定し、分泌に対する効果についても検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究全体はおおむね順調に行われているが、腸管特異的インスリン受容体ノックアウトマウスの作製およびコロニーの拡大がやや遅れている。 その理由として、まず、23年度始めに米国コロンビア大学から供与される予定であったIR floxed(インスリン受容体ゲノムにloxP配列が導入された)マウスが、コロンビア大学マウス施設の移転のため大幅に送れ、23年度中頃に熊本大学に輸送されたことが挙げられる。さらに、熊本大学マウス施設では、マウス個体の直接搬入は禁止されており、いったん精子を採取後、体外受精によりクリーニングを行わなければならなかったため、当初の計画より4ヶ月程遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
腸管におけるインスリン作用の解析:23年度に作製されたIR(flox/+); villin-Creマウスをもとに、腸管特異的インスリン受容体ノックアウトマウスを作製する。これらのマウスを用いて、まずは常法に従い、糖・エネルギー代謝について解析する。具体的には、耐糖能試験・インスリン感受性試験・ピルビン酸負荷試験・インスリン分泌能試験等の代謝実験、代謝ケージを用いたエネルギー代謝実験、血中インスリン・グルコース・脂肪酸・トリグリセリド等の濃度測定を行う。変異が認められたならば、次に、以下の点について腸管特異的インスリン受容体ノックアウトマウスを用いて多方面から解析し、変異発症のメカニズムを明らかにする。 a. 消化・吸収について:まず、より詳細な血液生化学的検査を行い、変化のある項目をスクリーニングする。変化のあった項目においては、小腸還流実験や培養細胞による実験を行い、吸収能について解析する。また、血液生化学的検査結果から変化が疑われる消化酵素群の合成・分泌について解析する。 b. 腸由来ホルモンにについて:上記の糖・エネルギー代謝に関する実験の結果から、血中濃度に変化があると疑われる腸管由来ホルモンを選択し、ELISA法にて血中濃度を測定する。血中濃度に著しい変化のあったホルモンについては、その遺伝子発現、タンパク質発現、分泌について詳細に検討する。 c. 糖新生について:マウスを飢餓状態にし、グリコーゲン分解がほぼ終了したあとの糖新生に異常があるか否かを検討する。またその時、G6PaseやPEPCK等の糖新生関連酵素群の発現を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
組織特異的インスリン受容体ノックアウトマウスの作製・解析のため、研究経費のほとんどは実験動物費用を含む消耗品費に割り当てられる。消耗品費の内訳として、PCR用プライマーや抗体等の遺伝子解析用試薬・消耗品、培養細胞培養液や遺伝子導入試薬等の培養細胞解析試薬・消耗品、グルコース代謝実験試薬やELISA等の動物実験用試薬・消耗品を計上した。本研究を遂行するにあたり、現有設備で充足されるため、新規に購入する設備はない。また、全体の研究経費の90%を越える項目はない。
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