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2012 年度 実施状況報告書

副交感神経による膵β細胞機能維持の解析

研究課題

研究課題/領域番号 23591315
研究機関横浜市立大学

研究代表者

伊藤 譲  横浜市立大学, 医学部, 助教 (00512980)

研究分担者 寺内 康夫  横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40359609)
キーワード膵β細胞 / 副交感神経 / アセチルコリン / インスリン
研究概要

神経伝達物質(アセチルコリン)が膵β細胞機能維持(β細胞の生死、インスリン分泌、インスリンシグナル)に関わっているかを明らかにする目的で、まず無血清培養下MIN6細胞にアセチルコリンを添加し細胞数の変化を検討したところ細胞数が増加した。また、BrdU取り込みをフローサイトメトリーにて検討したところ、アセチルコリンによりBrdU取り込みが有意に増加した。アセチルコリンが膵β細胞の増殖を促すことが示唆された。
ジアゾキシドにて、アセチルコリン刺激によるBrdU取り込みが部分的に抑制さておりインスリンレセプターを介した膵β細胞の増殖作用の経路が存在すると考えられる。
インスリンシグナル活性化は膵β細胞の生死、複製に関わっており、インスリンシグナルの解析を行った。アセチルコリン刺激により、IRS-2とMAPkinase、CREBリン酸化が亢進していたが、Aktのリン酸化は認められなかった。MAPkinaseの阻害剤ではアセチルコリン刺激によるBrdU取り込みは抑制されず、MAPkinase経路、Akt経路とは異なった機序にて細胞増殖が起きていると考えられる。
GLP-1作用の一部に自律神経が関わっているかを、マウスにGLP-1受容体作動薬であるliraglutideを投与し解析を行った。マウスにliraglutide投与を行うとインスリン分泌は増加するが、ムスカリニックレセプター阻害剤であるアトロピンを前投与するとliraglutideによるインスリン分泌は抑制されていた。またこの作用は糖尿病モデルマウスであるglucokinaseヘテロ欠損マウスでも同様の結果であった(Endocrinology, 153, 3066, 2012)。GLP-1によるインスリン分泌に自律神経経路の関与が考えられ、上記と同様にインスリンシグナルの活性化、膵β細胞の増殖作用に関し解析を進める。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

MIN6細胞において神経伝達物質の細胞増殖機構に関しほぼ計画通りに研究を進めた。マウスにおける解析では、迷走神経遮断の解析が手技的に確立しなかったが、代わりにムスカリニックアゴニスト投与を行うことで、神経伝達物質のβ細胞への役割に関しin vivoでの解析が可能となった。IRS2欠損マウスでのインスリン分泌に関し下記の推進方策に記載した通り新たな知見を得ている。
インクレチン製剤の神経調節の関与についても、マウスにliraglutide投与を行い解析を進めた。

今後の研究の推進方策

神経伝達物質、アセチルコリンの膵β細胞増殖作用の機序解明を引き続き行う。マウスにムスカリニックレセプターアゴニストを投与すると、血糖改善、インスリン分泌増加作用を認めており、現在、アゴニスト投与にてマウスの膵β細胞増殖が起きるかを組織学的に解析している。マウスでのβ細胞増殖が確認できれば、IRS-1、IRS-2、glucokinase、PI3-kinase欠損マウスを用い増殖作用を解析することで、β細胞増殖経路を明らかにすることができる。
またインスリン分泌に関して、IRS-2欠損マウスにムスカリニックレセプターアゴニスト投与を行うと、野生型マウスに比して血糖がより改善し著明なインスリン分泌増加を認めた。ムスカリニック刺激によるインスリン分泌に対しIRS-2は抑制的に働いていることが明らかとなり、機序に関し解析をすすめる。
MIN6細胞でliraglutideによる膵β細胞増殖作用がカルバコールにより増強されるかをBrdU取り込みにて解析を行う。その増殖経路に関しインスリンシグナルを含め解析を行い、GLP-1と神経伝達物質の相互関係に関して解析を行う。また、マウスにおいても上記で使用したムスカリニックレセプターアゴニストとGLP-1 受容体作動薬liraglutideを同時に投与し膵β細胞量がさらに増加するかを解析する。各種欠損マウスを用い、その増殖経路に関してどの分子が関わっているかを検討する。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Glycemic control after addition of the dipeptidyl peptidase-4 inhibitor alogliptin in patients with type 2 diabetes showing inadequate response to thrice-a-day treatment with α-glucosidase inhibitors.2013

    • 著者名/発表者名
      Masuda K, Aoki K, Kamiko K, Takihata M, Ito Y, Nagakura M, Kawasaki S, Akema N, Hasegawa M, Nakajima S, Shinoda K, Toumura S, Tsunoda S, Enomoto H, Shimotomai H, Terauchi Y.
    • 雑誌名

      Expert Opin Pharmacother

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Trefoil factor 2 promotes cell proliferation in pancreatic β cells through CXCR-4-mediated ERK1/2 phosphorylation.2012

    • 著者名/発表者名
      Orime K, Shirakawa J, Togashi Y, Tajima K, Inoue H, Ito Y, Sato K, Nakamura A, Aoki K, Goshima Y, Terauchi Y.
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 154 ページ: 54-64

    • 査読あり
  • [雑誌論文] KEYWORD SREBP 脂肪肝や糖インスリン代謝など生活習慣病に深くかかわる2012

    • 著者名/発表者名
      伊藤譲、寺内康夫
    • 雑誌名

      Cardio-Lipidology

      巻: 6 ページ: 80-83

  • [学会発表] 妊娠糖尿病にてインスリン治療が必要となった症例の臨床背景に関する検討2013

    • 著者名/発表者名
      伊藤 譲, 澁谷誠、細川紗帆、吉村公一郎, 山本葉子、永田亮、杉浦賢、寺内 康夫
    • 学会等名
      第56回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      熊本市民会館(熊本)
    • 年月日
      20130516-20130518
  • [学会発表] インスリン治療内容が血糖コントロールおよび糖尿病合併症に及ぼす影響の比較検討 多施設後ろ向き研究2012

    • 著者名/発表者名
      宮崎 岳之, 中村 昭伸, 澁谷 誠, 青木 一孝, 伊藤 譲, 中島 茂, 木村 真理, 寺内 康夫
    • 学会等名
      第55回日本糖尿病学会年次学術集会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川)
    • 年月日
      20120517-20120519

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公開日: 2014-07-24  

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