研究課題/領域番号 |
23591316
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
木村 真理 横浜市立大学, 附属病院, 准教授 (40363840)
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研究分担者 |
寺内 康夫 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40359609)
中村 昭伸 横浜市立大学, 大学病院, 助教 (70552420)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 内臓脂肪 / インクレチン / ジペプチジルペプチダーゼ / インスリン |
研究概要 |
2型糖尿病モデルマウスである膵β細胞特異的グルコキナーゼへテロ欠損マウス(GK+/-)を用いて、食事中の糖の主成分であるスクロース(S)と主要な脂肪酸であるオレイン酸(O)、リノール酸(L)をそれぞれ組み合わせた食餌(SO、SL)による多臓器のglucolipotoxicityの病態を解析した。 SLを25週間投与したGK+/-マウスは、SO投与群に比較して、膵島における膵β細胞量の低下と膵α細胞の膵島内への分散化、膵β細胞の小胞体ストレス誘導およびアポトーシス亢進が認められた。GK+/-マウスに、DFSを添加したSLを20週間投与したところ、OGTTにて耐糖能の改善を示すとともに、膵島における膵β細胞量低下と膵α細胞の分散化の改善、膵β細胞における小胞体ストレス、アポトーシスの抑制、膵β細胞の増殖能亢進が認められた。 SL群では白色脂肪細胞サイズはSO群と同等であったが、脂肪組織へのマクロファージ浸潤亢進およびCD11c陽性M1マクロファージの増加を呈し、CD8陽性T細胞増加も認めた。DFS投与により脂肪組織へのM1マクロファージおよびCD8陽性T細胞浸潤が改善した。SO、SL両群において軽度の脂肪肝を認められたが、DFS投与により両群ともに脂肪蓄積が軽快した。mRNA発現解析では、SREBP-1cおよびSCD-1の発現抑制、PPARαの発現上昇が認められた。 以上の成績より、DFSは膵島、脂肪組織および肝臓と、多臓器における食事誘導性のglucolipotoxicityに改善作用を持つことを証明した。膵島に対してはGLP-1を介した小胞体ストレスおよびアポトーシスからの保護、肝臓に対してはGLP-1を介した脂肪合成系酵素発現調節による肝臓内脂肪蓄積の抑制、脂肪組織に対してはDPP-4酵素活性阻害によるリンパ球・マクロファージの機能修飾の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね研究計画に沿って、実験を進めてきた。論文発表、学会発表も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
DPP-4阻害が、血糖降下作用に加えて内蔵脂肪炎症の改善作用を有するという観点から、2型糖尿病患者においてもDPP-4阻害薬が内蔵脂肪炎症の改善作用を有することが示されれば、今後の糖尿病治療指針において重要なevidenceとなる。臨床展開研究を推進していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
DPP-4欠損マウスを用いて、高脂肪食負荷による内蔵脂肪炎症を惹起させ、野生型マウスと比較する。内蔵脂肪重量、内蔵脂肪組織への細胞浸潤の解析(免疫組織染色、フローサイトメーター、遺伝子発現、タンパク発現、サイトカイン定量等による解析)を行い、DPP-4欠損による内蔵脂肪炎症の抑制効果を検証する。また、DPP-4欠損による内蔵脂肪炎症抑制における責任臓器(責任細胞)を明らかにする。さらにDPP-4欠損マウスに、DPP-4阻害薬やGLP-1受容体活性化薬を投与して、DPP-4を介さないDPP-4阻害薬の効果(DPP-4以外の標的に対する効果)や、内因性インクレチンに加えてのインクレチンの効果も検証する。2型糖尿病患者においても、DPP-4阻害薬がPAI-1を減少させることができるかを検証する。
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