研究課題/領域番号 |
23591317
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
長谷川 剛二 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00295643)
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研究分担者 |
石神 昭人 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), その他部局等, その他 (50270658)
福井 道明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30247829)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 糖尿病合併症 / SMP30 / ビタミンC |
研究概要 |
加齢指標蛋白質30 (Senescence Marker Protein-30:SMP30)は加齢に伴い減少し臓器傷害の閾値を低下させることにより老化病態を引き起こす。一方、SMP30は哺乳類のビタミンC(VC)合成経路の酵素であるグルコノラクトナーゼと同一である。本研究では、SMP30の糖尿病性心筋症、腎症発症における役割を検討した。<方法>8週令、雄SMP30ノックアウト(KO)、野生型マウス(WT)を用いストレプトゾシン誘発糖尿病(DM)を作成。VC補充条件(VC(+);飲水中VC 1.5 g/l)あるいは欠乏条件(VC(-);37.5mg/l、壊血症を起こさず正常な発育を保つ)で飼育した。糖尿病誘発12週後に腎・心臓の病理組織、酸化ストレスマーカー、小胞体ストレスマーカー、炎症マーカー、線維化マーカーの発現(定量RT-PCR)を検討した。<結果>心臓・腎皮質線維面積はDM群で増加し、心・腎ともにKO-DM-VC(-)群で著明な増加を認めた。KO-DM-VC(+)、WT-DM群間で明らかな差はなかった。腎メサンギウム基質/糸球体面積比(PAS染色)の増加はDM群間で差を認めなかった。MCP-1の発現は腎でのみKO-DM-VC(+)、KO-DM-VC(-)群でWT-DM、WT-C群に比較して著明に増加した。p67phox 、TGF-βの発現はDMにより増加したがVC欠乏の影響は検出されなかった。ATF6 XBP-1の発現に明らかな傾向は認めなかった。<考察>VC補充下ではSMP30の欠損は合併症進展に影響を及ぼさない。今回のモデルはVC欠乏の影響をみたものである。腎症の糸球体病変と尿細管病変(間質線維化)の発症機序に明確な違いが存在することが明らかになった。VC欠乏による心線維化、尿細管病変発症機序を明らかにすることは新規の治療ターゲット探索へ繋がると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りSMP30ノックアウトマウスを用いて糖尿病モデルマウスを作成し、SMP30欠乏が糖尿病性心・腎合併症に及ぼす影響を組織学的に明らかにできた。プレリミナリーであるが定量RT-PCRにより酸化ストレスマーカー、小胞体ストレスマーカー、炎症マーカー、線維化マーカーの発現をスクリーニングし、今後の方向性を定めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究の結果、SMP30の欠乏のみでは糖尿病性心・腎合併症の進展因子にならず、SMP30欠乏によるビタミンC欠乏が重要であることが明らかになった。今年度からはSMP30ノックアウトマウスをビタミンC欠乏モデルとして使用し、ビタミンC欠乏の糖尿病性心・腎合併症進展機序を明らかにしていく。研究方法の変更はなく、平成23年度の成果との継続性は保たれる。1.組織学的検討:4HNE染色、TUNEL染色、HIF-α染色2.定量RT-PCR、Western blotting:p67phox、TGF-β、MCP-1、PPAR-γ、PPAR-α、Bnip3 HIF-α3.機能解析:尿アルブミン測定、心エコー
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に作製した実験動物のパラフィンブロック、RNA検体、蛋白検体を用いて主に研究を進める。その内容は免疫組織染色・TUNEL染色(400,000円)、定量RT-PCR(試薬、キット:400,000円)、Western blotting(試薬、抗体、キット:450,000円)、尿アルブミン測定キット、一般試薬・器具(100,000円)、旅費(成果発表:50,000円)を予定している(合計:1,400,000円)。
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