研究課題/領域番号 |
23591324
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
荻原 健 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60399772)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | Set9 / NF-kB / メチル化 / 膵β細胞 / 炎症 |
研究概要 |
インスリンを分泌する膵β細胞の機能不全は、糖尿病発症に重要な役割を果たしており、炎症は膵β細胞機能不全に関与していることが報告されている。NF-κBは炎症を制御する転写因子の一つであり、メチル化酵素Set7/9はNF-κBと協調的に作用し、炎症を制御することが非膵β細胞において証明されている。Set7/9は膵島に豊富に発現していることから、Set7/9が膵島の炎症に関与しているとの仮説を立て、その検証のために実験を行った。実験モデルとして、マウス膵β細胞の腫瘍株であるβTC3細胞を用い、Set7/9をノックダウンした後に、炎症性サイトカインで刺激した。RT-PCR法を用いて遺伝子発現を検討した結果、Set7/9ノックダウン群では非ノックダウン群と比較して、NF-κBの標的遺伝子であるNOS2(iNOS)のサイトカイン応答性発現上昇が約40%低下した。ウエスタン・ブロッティング法で確認したところ、サイトカイン応答性のiNOS蛋白の発現も約80%低下した。以上の解析から、膵β細胞においてSet7/9が、iNOS発現を制御することが示された。Set7/9作用の詳細なメカニズムを解明するために実験を行った。NF-κBは、サイトカイン応答性に細胞質から核内に移行することが知られている。βTC3細胞から細胞質・核蛋白を別々に抽出しNF-κB蛋白量を測定した結果、NF-κBのサイトカイン応答性核内移行は、Set7/9ノックダウンによる影響を受けなかった。次いで、ChIPアッセイを施行し、Set7/9ノックダウンにより、NOS2遺伝子のヒストン3内のリジン4のメチル化が障害されていることが明らかとなり、Set7/9がNOS2遺伝子のクロマチン構造を制御していることが示唆された。本研究の意義は、メチル化修飾による炎症の制御機構を明らかにし、糖尿病治療の新たな治療法の開発に貢献することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の結果から、膵β細胞においてSet7/9がiNOSの発現を通じて、炎症を制御していることが明らかとなった。現在は、サイトカインからiNOS発現に至るまでの経路を詳細に解析し、Set7/9の具体的な作用起点を明らかにすべく実験を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
NF-κBのメチル化解析・NF-κBの標的遺伝子のクロマチン構造の解析を通じて、Set7/9が炎症を制御する機構の詳細を明らかにする。また、膵β細胞株の実験で得た知見を、膵島特異的Set7/9ノックアウトマウスで検証する方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
RT-PCR、ウエスタン・ブロッティング、ChIP assay等の分子生物学的解析に800,000円、実験に供する動物の系統維持に300,000円、消耗品等に200,000円の費用を計上している。
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