研究課題/領域番号 |
23591324
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
荻原 健 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60399772)
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キーワード | Set9 / NK-kB / メチル化 / 膵β細胞 / 炎症 |
研究概要 |
インスリンを分泌する膵β細胞の機能不全は、糖尿病発症に重要な役割を果たしており、炎症は膵β細胞機能不全に関与している。NF-κBは炎症を制御する転写因子の一つであり、メチル化酵素Set7/9はNF-κBと協調的に作用し、炎症を制御することが非膵β細胞において報告された。Set7/9は膵島に豊富に発現していることから、Set7/9が膵島の炎症に関与しているとの仮説を立て、その検証のために実験を行った。 マウス膵β細胞の腫瘍株であるβTC3細胞を用い、Set7/9をノックダウンした後に、炎症性サイトカインで刺激した。RT-PCR法を用いて遺伝子発現を検討した結果、Set7/9ノックダウン群では非ノックダウン群と比較して、NF-κBの標的遺伝子であるNOS2(iNOS)のサイトカイン応答性発現上昇が約40%低下し、ウエスタン・ブロッティング法においてもサイトカイン応答性のiNOS発現が約80%低下した。また、Annexin5とCaspase3の検討では、サイトカイン刺激によりβTC3細胞のアポトーシスが増加し、Set7/9ノックダウンにより、そのアポトーシス増加が抑制された。 NF-κBは、サイトカイン応答性に細胞質から核内に移行することが知られている。βTC3細胞から細胞質・核蛋白を抽出し検討したところ、興味深いことに、Set7/9もサイトカイン応答性に核内へ移行し、免疫沈降法を用いてSet7/9がNF-κBと複合体を形成することを確認した。次いで、ChIPアッセイを施行し、Set7/9ノックダウンにより、NOS2遺伝子内のヒストン3リジン4のメチル化が障害されていることが明らかとなり、Set7/9がNOS2遺伝子のクロマチン構造を制御していることが示唆された。 本研究の意義は、メチル化修飾による炎症の制御機構を明らかにし、糖尿病治療の新たな治療法の開発に貢献することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の結果から、膵β細胞においてSet7/9がiNOSの発現を通じて、炎症を制御し、アポトーシスに関与する可能性が示唆された。更に、Set7/9はクロマチン構造の制御を通じて、サイトカイン応答性のiNOS発現に関与することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
NF-κBのメチル化解析・NF-κBの標的遺伝子のクロマチン構造の解析を通じて、Set7/9が炎症を制御する機構の更なる詳細を明らかにする。また、膵β細胞株の実験で得た知見を、膵島特異的Set7/9ノックアウトマウスで検証する方針である。
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次年度の研究費の使用計画 |
RT-PCR、ウエスタン・ブロッティング、ChIP assay等の分子生物学的解析に750,000円、実験に供する動物の系統維持に250,000円、消耗品等に170,000円の費用を計上している。
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