研究課題/領域番号 |
23591326
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
袴田 秀樹 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (70284750)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 中鎖脂肪酸 / CaCo-2細胞 |
研究概要 |
今年度は中鎖脂肪酸の迅速測定システムの開発に注力し、次の検討を行った。先ず、現有装置である二流路系電気化学検出高速液体クロマトグラフィーに、オートサンプラーを組み込んだ。オートサンプラーの組み込みによって、新たなノイズの出現やベースライン電流の不安定化などが危惧されたが、中鎖脂肪酸標準溶液の測定では、マニュアルインジェクションと同等の検出感度を得ることができた。また、装置の精度管理の一環として、FUMI (function of mutual information) 理論が本測定系に適用可能であるかを検討した。中鎖脂肪酸標準溶液を注入し、幾つかのクライテリアについて検討した結果、中鎖脂肪酸測定システムにFUMI理論が適用可能であることが分かった。そこで、日常の試料測定の前に、毎朝一回中鎖脂肪酸の標準溶液を用いてクロマトグラムを測定し、中鎖脂肪酸のピーク高さ、内標準物質に対する中鎖脂肪酸のピーク高さの比、FUMI理論で算出した相対標準偏差、検出限界について、経時的なモニターを行った。その結果、中鎖脂肪酸のピーク高さは17日間で約30%にまで低下し、相対標準偏差と検出限界は3~5倍ほど増加するものの、内標準物質に対するピーク高さの比は一定であることが分かった。電極の研磨を行うと、いずれのパラメーターも初期値にまで復活した。この結果から、適切な測定精度と感度を保って測定を続けるためには、2週間に一回電極を研磨すると良いことが明らかとなった。以上から、今年度は中鎖脂肪酸測定システムを開発と、その維持管理方法を確立できた。これらに加え、CaCo-2細胞の単層培養系を用いる中鎖脂肪酸透過の予備的検討、FUMI理論のコレステロール定量への適用、MALDI-TOF MSによる酸化ステロールの検出、ラソステロール定量法の開発など、中鎖脂肪酸関連物質に着目して、測定法の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた実験をおおむね行うことができたため。ただし、平成23年度は中鎖脂肪酸の測定システムの開発に研究の重心をおいた関係から、CaCo-2細胞単層培養系を用いる中鎖脂肪酸の透過実験にはやや遅れがあり、平成24年度も継続して行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
研究がおおむね順調に進展していることから、今後の研究の推進方策に大きな変更はない。平成23年度の研究を終えて次年度使用額が発生した主な理由は、(1)中鎖脂肪酸測定システムの開発に際して、液体クロマトグラフィー用カラムなどの高額消耗品や部品等の交換をせざるをえないような様々なトラブルが起きることを想定していたが、実際はお金のかかるトラブルは少なかったこと、(2)経費として計上していた人件費、謝金、その他の費用を使用しなかったこと、(3)消耗品や試薬の購入に際しては、会社間の比較を徹底し、倹約に努めたこと、などが挙げられる。いずれにしても、平成24年度は当初の申請書に書いたとおり、CaCo-2細胞単層培養系を用いる中鎖脂肪酸の透過特性の解析を進める。具体的には、低温(4 ℃)、アジ化ナトリウムによるATP枯渇、透過実験用の培地からのナトリウムイオン枯渇、Transwellのapical sideとbasolateral sideでのpH勾配、各種の阻害剤の効果など、種々の培養条件を設定し、それらの中鎖脂肪酸透過への効果を検討する。同時に、これらの細胞実験の結果から中鎖脂肪酸輸送体の候補となっているトランスポーター分子をRT-PCRによって検出する実験系を構築し、ノックダウン実験のための予備的検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、開発した中鎖脂肪酸測定システムの維持管理、中鎖脂肪酸の透過実験、RT-PCRやノックダウン実験などを行うため、研究費の大半はこれらの実験のための試薬や消耗品に使われることになる予定である。繰り越された研究費は、これらの消耗品などに使われる。加えて、平成24年度から新たに大学院生が入学しており、実験補助と資料整理のための謝金の支払いも予定している。実験は、申請書に書いたとおり、細胞実験で絞り込んだトランポーター分子のうち、どの分子が中鎖脂肪酸の輸送に関わるかを、個々の分子のノックダウンを行って明らかにする。現代の生化学的実験で多用されるのは、発生工学的にノックアウトマウスを作製するか、siRNAを発現させて目的のトランスポーターのmRNAを分解するかのどちらかである。本研究では、細胞培養系を用いて細胞膜透過実験を行う経緯から、後者のsiRNAを選択する。具体的には、siRNA発現ベクターを感染させて目的のトランスポーター分子に対するsiRNAを定常発現させたCaCo-2細胞を樹立し、そのCaCo-2細胞を単層培養系とし、中鎖脂肪酸の透過量の増減を検討し、中鎖脂肪酸トランスポーターを同定する。
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