研究課題/領域番号 |
23591326
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
袴田 秀樹 東京薬科大学, 薬学部, 准教授 (70284750)
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キーワード | 中鎖脂肪酸 / CaCo-2細胞 |
研究概要 |
中鎖脂肪酸の細胞透過実験のためのin vitroアッセイ系を構築する上で、ヒト小腸モデルとして頻用されているCaCo-2細胞の小腸分化の評価法が論文毎に異なっていることは大きな問題であった。そこで今年度は、CaCo-2細胞の分化状態の評価法の確立に注力し、次の検討を行った。先ず、CaCo-2細胞を種々の条件で培養したときのタイトジャンクションの形成と、小腸マーカーの発現変化のモニタリングを行った。経上皮電気抵抗値(Transepithelial Electroresistance; TEER)の測定では、経時的にTEER が増加して10日目以降に安定な値を示したことから、それ以降はタイトジャンクションが形成されていると考えられた。RT-PCR(reverse transcriptase-polymerase chain reaction)によって小腸マーカー酵素のmRNA発現を検討すると、Intestinal alkaline phosphatase,N-amino peptidase,Sucrase-isomaltaseは、10~14日目以降に高発現していることが示された。CaCo-2細胞の細胞溶解液中のこれらの酵素の活性を測定すると、Intestinal alkaline phosphataseとSucrase-isomaltaseの酵素活性の経時変化は、RT-PCRの結果とほぼ相関することが分かった。これらのことから、CaCo-2細胞は培養後二週間で小腸上皮様に分化しており、本研究で用いた手法も小腸分化の評価法になると考えられた。以上の検討から、小腸分化を確認したCaCo-2細胞を用いて中鎖脂肪酸の透過実験を行うことができるようになる。これらに加え、植物ステロールや生薬中の酸化還元物質など、中鎖脂肪酸代謝に関連した物質に着目した測定法の開発を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の報告に書いたように、平成23年度は中鎖脂肪酸の測定系の構築に力を入れたため、CaCo-2細胞を用いる中鎖脂肪酸の細胞透過についての実験が予定よりもやや遅れていた。今年度は、まだ公表できる段階ではないので研究実績の概要の項には記載しなかったが、CaCo-2細胞単層培養系を用いて、低温(4 ℃)、アジ化ナトリウムによるATP枯渇、透過実験用の培地からのナトリウムイオン枯渇、Transwellのapical sideとbasolateral sideでのpH勾配、各種の阻害剤の効果など、種々の培養条件を設定し、それらの中鎖脂肪酸透過への効果を検討し、中鎖脂肪酸トランスポーターの候補を絞り込んでいる。現在は、それらの分子に対するプライマーを設計して、そのmRNA発現をRT-PCRによって検出する実験系を構築中である。CaCo-2細胞単層培養系の小腸分化についても、RT-PCRとTEERの測定でおおよその状態を評価できることが分かり、分化を確認した細胞を使って透過実験を行うことができるようになった。以上のことから、研究計画の遂行に関して大きな問題はなく、おおむね順調であると言ってよいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「次年度使用額」の合計は0円であり、研究費の持ち越しはない。平成25年度は研究の最終年度であり、申請書に記載した通り、中鎖脂肪酸のトランスポーターを決定することに注力する。研究計画の大きな変更もない。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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