最終年度である平成25年度は、昨年度までの研究成果を踏まえて、次の2点に注目して研究を進めた。第1点目として、中鎖脂肪酸測定の高精度化を目的として、試料前処理の精度推定を行った。既に中鎖脂肪酸の迅速測定システムの開発は済んでおり、標準試料を用いた分析法バリデーションを行うことによって測定装置自体の信頼性は確保できている。しかしながら、試料の前処理を含めた実試料の測定結果の信頼性までは、十分には解析できていない。そこで、前処理の個々の操作や、使用する器具の精度を実験的に求め、試料前処理過程のどの段階が実試料の測定精度に最も寄与するかを明らかにしたいと考えた。現時点ですべての実験が終了したわけではないが、試料(今回は細胞培養培地)採取の際のピペット操作は、実試料の測定精度に大きく寄与することが示されている。第2点目としては、CaCo-2細胞単層培養系に発現するトランスポーターについて、RT-PCR(reverse transcriptase-polymerase chain reaction)によるmRNA発現の確認を行った。中鎖脂肪酸トランスポーターの候補分子として、モノカルボン酸トランスポーターのサブタイプのうち、モノカルボン酸トランスポーター5、6、7は中鎖脂肪酸の細胞透過に関与することが示唆されている。小腸上皮様の分化を遂げたと考えられる二週間培養後のCaCo-2細胞単層培養系に、これらの分子のmRNA発現していることを確認できた。これらに加え、中医薬中の酸化還元物質など、中鎖脂肪酸代謝に関連した物質の定量システムの開発を行った。
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