研究課題/領域番号 |
23591329
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小山 英則 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (80301852)
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研究分担者 |
福本 真也 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90381996)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肥満 / メタボリックシンドローム / 血管内皮障害 / 炎症 |
研究概要 |
1. RAGEによる脂肪細胞分化・肥大化の増強におけるTLR2の意義: H22年度の研究課題で、3T3L1細胞を用いた脂肪細胞分化誘導系において、RAGEの過剰発現が脂肪細胞の肥大化を引き起こすことを見出した。本年度の検討では、RAGEリガンドであるHMGB1、S100bそれぞれのノックダウンはRAGEによる脂肪細胞の肥大化を抑制しなかったが、ダブルノックダウンによりほぼRAGEの作用はキャンセルされた。このことはこの二種類の内因性RAGEリガンドが相補的にRAGE作用を調節することを示している。一方、RAGE過剰発現によりTlr2の発現は一過性に増加したが、Tlr4の発現は影響を受けなかった。Tlr2ノックダウンによりRAGEによる脂肪細胞肥大化は有意に抑制されたが、Tlr4ノックダウンは有意な影響を及ぼさなかった。2. 血管内皮細胞のRAGE作用におけるGADD45β;遺伝子の意義:H22年度の研究課題においてヒト血管内皮細胞においてRAGEはGADD45βの発現を低下させることを見出している。このGADD45βのRAGEによる炎症惹起作用における意義を明らかにするためGADD45β発現アデノウイルスを作製し、現在検証中である。3. RAGE切断の機序と内因性RAGEリガンドの意義: H22年度までの研究課題で、RAGE過剰発現内皮細胞の培養上清中のRAGEをImmunoblotで定量する系を確立し、TNFαがRAGE切断をADAM10依存性に促進することを見出している。本年度の検討により、内因性RAGEリガンドのS100P, HMGB1がRAGE切断を促進すること、S100PのノックダウンによりTNFαによるRAGE切断が抑制されることが明らかになった。またTNFα情報伝達系JNK, p38がRAGE切断にかかわることを見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. RAGEによる脂肪細胞分化・肥大化の増強におけるTLR2の意義:in vitro研究は概ね順調。動物実験も進行中。2. 血管内皮細胞のRAGE作用におけるGADD45β;遺伝子の意義:GADD45βアデノウイルスの作製・検証中でややその意義に関する研究は遅れ気味。3. RAGE切断の機序と内因性RAGEリガンドの意義:概ね順調に進行している。RAGE発現内皮細胞株は複数作製しているが、高発現株を得るには苦労している。
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今後の研究の推進方策 |
1. RAGEによる脂肪細胞分化・肥大化の増強におけるTLR2の意義:Tlr2リガンドの脂肪細胞肥大化への影響、肥大化細胞の脂肪細胞機能(インスリン感受性、アディポサイトカイン発現、インスリンシグナル)に対する影響を検討する。またRAGE決失マウス内臓脂肪組織におけるTlr2およびサイトカイン発現を検討予定。2. 血管内皮細胞のRAGE作用におけるGADD45β;遺伝子の意義:GADD45βアデノウイルスを用いて、RAGEによる炎症惹起さようを制御可能か検討予定。3. RAGE切断の機序と内因性RAGEリガンドの意義:TNFαシグナルのRAGE切断機序をさらに解明する。特にADAM10活性化との関連を検討予定。RAGE高発現内皮細胞株は継続で作製予定であるが、不成功な場合には、アデノウイルス発現系を用いたシステムでケミカルライブラリーのスクリーニングに踏み切ることを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H23年度は大阪市立大学から兵庫医科大学への異動直後でもあり、兵庫医大での実験系の確立に向けた工程(P2実験の承認、動物実験室使用手続き、マウス搬入手続きなど)が遅れ気味であったこと、また発注済みの物品の納入が年度内に行われなかったなどの理由で、実験経費の執行が本年にずれ込んでいる。そのため、本年度の繰越額と次年度支給額を合わせた総額を本年度に執行予定である。
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