研究概要 |
10週齢の雄性C57BL/6Jに4週間の60%高脂肪食(以下、HFD)を摂取させたところ(HFDマウス)、通常食摂取の対照マウスと比較し、体重の増加と空腹時血糖の軽度増加を認めた。これらマウスから膵島を単離し、H3K27ac、H3K4me1、H3K36me3といったヒストン修飾についてChIP-seqを行った。H3K27acはエンハンサーのマーカーとして知られるが、HFDマウス膵島では対照マウス膵島と比較して、全ゲノム上11,066箇所においてそのエンリッチメントが増加していた。また、GREAT(Genomic Regions Enrichment of Annotations Tool, Nat Biotechnol 28, 495-501, 2010)を用いた解析により、これらの領域が膵ベータ細胞数、タンパク質フォールディングに関する遺伝子の発現調節に関与している可能性が示された。H3K4me1は遺伝子発現調節領域に特徴的なマーカーとして知られる。このヒストン修飾に関しては、HFDマウス膵島では対照と比較し、全ゲノム上において8,143箇所のエンリッチメントが上昇していた。転写領域に特徴的なH3K36me3については、HFDマウス膵島において4,683箇所のエンリッチメントが上昇していた。膵島からtotal RNAを精製し、mRNA-seqも行ったところ、遺伝子発現レベルとヒストン修飾のエンリッチメントには関連性が認められた。特に、HFDマウス膵島においてH3K27acエンリッチメントが対照マウス膵島より増大していた場合、その近傍に位置する遺伝子のmRNA発現レベルは、変化のなかったH3K27ac近傍の遺伝子と比較し上昇していた。
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