研究課題/領域番号 |
23591330
|
研究機関 | 独立行政法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
南茂 隆生 独立行政法人国立国際医療研究センター, 研究所 糖尿病研究センター 代謝疾患研究部, 室長 (50594115)
|
キーワード | エネルギー・糖代謝異常 |
研究概要 |
平成23年度の当報告書において、HFDマウス(10週齢の雄性C57BL/6Jに4週間の60%高脂肪食摂取させたもの)の膵島において、ヒストン修飾が近傍のmRNA発現レベルと関連することを報告した。昨年度はこれらのデータに対してより詳細な検討を追加するとともに、18週間のHFD負荷を行ったC57BL/6Jマウス、自然発症糖尿病モデルマウスであるKKマウス・db/dbマウスの検討も開始した。次世代シークエンサーによる遺伝子発現解析に、より適切な正規化手法(Algorithms Mol Biol. 7:5, 2012)を導入することによって、実験群と対照群の間に多数の発現変動遺伝子を同定することが可能となった。HFDマウスについては、ヒストン修飾と遺伝子発現変動の関連性により一層の妥当性が見出された。また、遺伝子によっては、HFD負荷の期間によって発現変動プロファイルに変化を来すことも観察された。HFDマウスは18週間の高脂肪食負荷後も血糖値の上昇が軽度であり、代償機序の維持メカニズムは羅病期間によって変化して行くことを示している可能性がある。顕性糖尿病を発症したKKマウス、db/dbマウスから得られたデータを代償モデルのものと比較を行うことによって、代償機序の破綻および糖尿病発症との関連が疑われる遺伝子をリストアップすることもできた。生物学的レプリケートおよび複数のマウスモデルを検討することによって、意義の一貫した発現変動を示す遺伝子数は限定されつつあることから、病態の考察において有用であると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の成果を受け、新しい解析手法・解析モデルをさらに導入することによって、病態の考察に広がりが出るとともに、興味の対象となる遺伝子は徐々に限定されつつある。このような理由によって、本研究は現在までにおおむね順調に進展していると考えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
HFD負荷による膵島エピゲノム変化は、多数のゲノム領域をターゲットとすることが明らかとなった。さらに、発現変動遺伝子も視野に入れることによって、病態において中心的な役割を果たす可能性のある遺伝子の候補が示されつつある。データのより多面的な解析を進めるとともに、特定の遺伝子に着目した過剰発現やノックダウンをはじめ、機能解析実験を考慮する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
機能解析実験のために主として必要となるsiRNAは1製品につき約40千円である。数種類の遺伝子についての検討が可能となる見込みである。
|