研究課題/領域番号 |
23591331
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
木村 孝穂 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90396656)
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キーワード | HDL / S1P / 血管内皮細胞 / 動脈硬化 / スカベンジャー受容体 |
研究概要 |
平成23年度に実施した実験をもとにAMPKを刺激する薬剤を用いてHDL受容体のひとつであるSR-BI発現に対する影響を調べた。メトホルミン、スタチンによる刺激ではHDL受容体であるSR-BI発現の増強効果が認められた。メトホルミン刺激によりAMPK活性化が認められたが、スタチン刺激ではAMPK活性化を認めなかった。メトホルミンおよびスタチンによる同時刺激では相乗効果、相加効果を認めなかった。引き続きAMPKの下流のシグナルと考えられるAktの活性化について調べた。メトホルミン、スタチン刺激ともにAktのリン酸化を認めた。メトホルミン同様AMPKを活性化させることが報告されている薬剤であるAICARでHUVECを刺激するとメトホルミン同様にSR-BI発現増強効果を認めた。AICAR刺激でメトホルミン同様Aktのリン酸化が認められた。スフィンゴシン1-リン酸(S1P)ではAMPK、Akt、MAPKの活性化が認められるのでメトホルミン、AICAR刺激によるMAPKの活性化を検討した。メトホルミン、AICAR刺激ではともにMAPKの活性化を認めなかった。これらの結果からメトホルミン、AICARなどのAMPK、Aktのシグナル系を特異的に活性化させるシグナル伝達系が存在し、このシグナル伝達系が血管内皮細胞におけるSR-BI発現調節機構に重要な役割を担っていることが示唆された。AMPKによるシグナル系を阻害するためAMPK特異的なsiRNAの血管内皮細胞への導入実験を始めた。平成23年度までの実験系では安定してsiRNAを血管内皮細胞内に導入することができていたが24年度になり購入した血管内皮細胞ではsiRNAによる毒性が著名に認められるようになりこれまでと同様の実験条件ではsiRNA導入による実験が安定して実施できない状況となっている。現在siRNA導入の実験条件の検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メトホルミン,AICARなどAMPKを活性化する薬剤の刺激で血管内皮細胞(HUVEC)のHDL受容体SR-BI発現が増強することは確認できた。またスタチン刺激でもHUVECでSR-BI発現が増強したがスタチンはAMPK活性化を伴っていなかった。ここまでの研究施行状況はおおむね順調であった。AMPKのシグナル伝達系への関与を調べるためにAMPK特異的なsiRNAを細胞内に導入する実験を始めた。平成23年度中はsiRNAの細胞への導入はおおむね安定した結果が得られていたが24年度になってからsiRNAの毒性が顕著に認められるようになった。この影響で細胞の応答が安定しない状態が続いている。現在、siRNA導入の実験条件の決定を行う基礎実験の継続中であり、siRNA導入のための条件が決定できないと今後の実験計画の再検討が必要である。この点で研究の進行は遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まずsiRNAを安定して血管内皮細胞に導入する実験系の確立が必要である。平成23年度までに実施した血管内皮細胞での実験では一定の条件下でsiRNAの細胞内への導入が可能であったが、24年度になってから購入した内皮細胞では同じ条件で実験を実施してもsiRNAの導入が安定して成功していない。24年度になってからはsiRNAの毒性が顕著に認められる。このため実験に使用する細胞の変更も含め検討中であるが、siRNA導入実験の条件設定を行っていく。siRNA導入に用いる脂質の検討を含めて実験を進める。一方でメトホルミン以外にHDL受容体SR-BIの発現調節効果を持つ薬剤のスクリーニングを進め、新たな動脈硬化治療薬の創薬へ向けて実験を進めていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
血管内皮細胞とその培養に必要な培養液、シャーレなどの消耗品。血管内皮細胞に導入するsiRNAおよび関連試薬。ウエスタンブロットに必要な膜、抗体、ろ紙、ゲルなどの消耗品。リアルタイムPCRに必要なRNA精製試薬、cDNA作成試薬、PCRに必要な試薬一式。実験計画通りに進んでいないものがあるため25年度も24年度に予定していた実験を行う。必要な試薬等は血管内皮細胞、培養液、siRNAなど関連試薬である。
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