研究課題/領域番号 |
23591332
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 哲郎 群馬大学, 医学部, 助教 (40302484)
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キーワード | PDIP1 / PPARγ / 核内ホルモン受容体 / 転写共役因子 / 脂肪細胞分化 / THRAP3 / 3T3-L1細胞 |
研究概要 |
近年私達は、核内受容体PPARγに結合する新規転写共役因子PPARγ DNA-binding domain-interacting protein1 (PDIP1)を単離し、その生体内機能を解析する目的でPDIP1 knockout (KO)マウスを樹立した。これまでの研究成果から、PDIP1KOマウスは高脂肪食 (HFD)誘導性肥満抵抗性、および脂肪肝抵抗性を示すことが判明している。培養細胞においてPDIP1は、PPARγのリガンド依存性転写活性化を増強することが明らかとなっているが、その詳細な分子機構は不明である。そこでLC-MS/MSを用いて、FLAG標識したPDIP1と共免疫沈降する新規細胞核蛋白の同定を試みた。その結果、PDIP1結合蛋白としてMediator複合体の構成蛋白と推定されているthryoid hormone receptor associated protein 3 (THRAP3)が同定された。 In vitroにおける結合解析の結果、THRAP3はPDIP1のヘリケースモチーフに直接結合し、培養細胞系においてPDIP1と協調的にPPARγによる転写活性化を増強した。3T3-L1前駆脂肪細胞分化過程において、THRAP3はほぼ一定の発現レベルを示し、siRNAを用いた内因性THRAP3ノックダウンにより、3T3-L1細胞の分化誘導が阻害され、終末分化に伴って誘導されるPpargやC/ebpa、あるいはその標的遺伝子であるFabp4/aP2遺伝子発現が有意に減弱した。一方で、早期分化に必須である転写因子群の発現には変化を認めず、THRAP3とPDIP1が白色脂肪細胞の終末期分化に重要な役割を果たすことが判明した。こられの知見より、PDIP1KOマウスにおけるHFD誘導性肥満抵抗性の一機序として、白色脂肪細胞の肥大化障害が関与する可能性が推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PDIP1による転写活性化の分子機構を解明する目的で、新規PDIP1結合蛋白の同定を試みた。その結果、THRAP3を単離し、3T3-L1脂肪細胞の終末分化におけるTHRAP3の役割について解析を行い、論文発表を行った。現在、更に他のPDIP1結合蛋白について更なる解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今回同定したTHRAP3は、Mediator複合体の構成蛋白であるばかりでなく、近年の報告では前駆体mRNAの選択的スプライシングやDNA修復に関与することが報告されている。PDIP1はDNA7/NAM2ヘリケースファミリーに属する蛋白であり、遺伝子転写のみならず、RNA processingに関与することも推察される。今後、PDIP1やTHRAP3が、転写調節のみならず、前駆体mRNAの選択的スプライシングにも協調的に関与するかどうか解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
PDIP1やTHRAP3がmRNA選択的スプライシングに関与するかどうか、エクソンアレイを用いて網羅的な解析を行う。その結果同定された標的遺伝子の機能やスプライシング調節機構について、主にin vitroの系を用いて詳細に解析を進める。
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