研究課題/領域番号 |
23591333
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研究機関 | 福島県立医科大学 |
研究代表者 |
塚本 和久 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (20251233)
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研究分担者 |
森屋 恭爾 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (00272550)
渡辺 毅 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80158641)
佐藤 博亮 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (20323595)
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キーワード | 小胞体ストレス / コレステロール / 肝臓 / 糖代謝 |
研究概要 |
I.アポE 欠損マウスにおけるNPC1L1 発現によるER ストレス・肝細胞内コレステロール(Chol)分布の変化の検討:アポE欠損マウスにNPC1L1を発現させたところ、野生型マウスの場合とは異なり、VLDL-Cholは増加したがHDL分画の増加は認めなかった。野生型マウスではNPC1L1発現による肝臓Chol量・血清GPT値・肝組織像に影響はなかったが、アポE欠損マウスでは肝臓のChol量・血清GPT値の増加、組織像での好中球浸潤の増加をNPC1L1発現により認めた。しかしNPC1L1発現による小胞体ストレスマーカー(Grp78発現量やeIF2のリン酸化など)の変化は認めなかった。 II.LDL 受容体およびHMG CoA 還元酵素の肝臓発現によるER ストレスの変化: LDL受容体を野生型マウスに発現させたところ、LDL受容体群では、総Chol値の低下、LDL分画とHDL分画のCholの低下、およびVLDL分画のCholの増加を認めた。肝臓内Chol量はLDL受容体群にて増加していたが、小胞体ストレスマーカー(Grp78の発現量、XBP1のスプライシングなど)には影響はなかった。HMG CoA還元酵素遺伝子のアデノウイルスを作成したが、タンパク発現を認めていないため、現在遺伝子配列の確認、発現確認のための抗体の検討などを行っている。 III.NPC1L1、LDL受容体過剰発現による糖代謝への影響:野生型マウスにNPC1L1を過剰発現させた群ではコントロール群と比較して、糖新生の抑制による空腹時血糖の有意な低下(60 mg/dL vs 110 mg/dL)を認めた。LDL受容体を野生型マウスに過剰発現させた場合も、コントロール群と比較して、空腹時血糖の有意な低下(90 mg/dL vs 110 mg/dL)を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HMG CoA 還元酵素のアデノウイルスは未完成であるが、そのほかの研究は当初予定していた検討、および平成24年度以降のI、IIIはほぼ終了している。さらには、LDL受容体、NPC1L1の過剰発現により糖代謝が改善するという新しい発見をすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は、当初の研究計画書にしたがって進めていく。具体的には、コレステロール新生酵素の肝臓での過剰発現による肝臓での脂質・小胞体ストレス変化、糖代謝変化を検討するとともに、NPC1L1/LDL受容体発現による糖代謝の修飾の詳細な機序を検討する。また、小胞体ストレス誘導物質による肝臓での小胞体ストレス・脂質代謝・糖代謝への効果、肝臓でのERストレス亢進マウスの肝組織を用いたタンパク解析も考慮する。 次年度に使用する予定の研究費が生じた状況:平成25年度には通常の研究費に加え、動物に小胞体ストレスを生じさせるための研究費やマススペクトロメトリーの経費に相当額が必要と考えられ、研究費の基金化を利用して、次年度にできる限り温存した。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、①HMGCoA還元酵素発現アデノウイルスによる肝臓脂質変化、肝臓小胞体ストレス変化、糖代謝変化について検討する。HMGCoA還元酵素発現アデノウイルス作成がうまくいかない場合は、同じコレステロール合成酵素であるLanosterol合成酵素発現アデノウイルス(作成済み)を用いて同様の検討をする。また、②NPC1L1過剰発現、LDL受容体過剰発現による糖代謝の修飾に関する機序についての更なる検討を予定している。さらに、③当初の計画通り、小胞体ストレス誘導物質であるTunicamycin、thapsigarginによる肝臓における小胞体ストレス、および脂質代謝、糖代謝に対する影響についても検討する予定である。④現時点ではERストレスを肝臓で亢進させるモデルは得られていないが、ERストレスを肝臓に惹起することができれば、マススペクトロメトリーを使用しての解析も考慮する。
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