研究課題/領域番号 |
23591334
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
野原 淳 金沢大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (50313648)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 高比重リポ蛋白 |
研究概要 |
高比重リポ蛋白(HDL)組成異常の背景因子として,耐糖能障害および糖尿病,さらに近年注目されている慢性腎疾患の関連が見出された.糖尿病においても高トリグリセライド(TG)血症は高頻度であるが,TGそのものより血糖コントロールとの相関が高い結果であった.またHDL組成異常の遺伝的背景の検討において近年miRNAを介したHDL代謝への制御機構が明らかとなった胆汁酸受容体の高頻度遺伝子多型のホモ型でHDLがTG-richとなることを見出した.耐糖能障害の進展にHDL組成が係わることが近年注目されており,同変異の存在はHDL-Cそのものも低下させるため,耐糖能障害進展への影響を前向き集団で検討を開始している.薬物療法による改善効果を検討ではアトルバスタチンを用いた高脂血症患者での評価ではLDL―CおよびVLDL-Cは著明に低下し,同時にLDL-PL,VLDL-PLも低下.その一方LDL-TGおよびVLDL-TGの変化は小さく結果としてVLDLおよびLDLのTG/PL比はむしろやや上昇.CETPを介して相互作用するHDLにおいてもTG/PLは軽度上昇傾向であった.HDL組成異常はスタチンで改善できないResidual riskの一つである可能性が示唆される結果である.HDL-TG/PLの変動にはCETPを介したLDLおよびVLDLとの相互作用が重要であることが明らかとなった.興味深いことにCETPとの相互作用はVLDLとLDLが競合しており,VLDL過剰の状態ではCETPとHDL-TG/PLに有意の正相関が認めらL-が,VLDLが少なくLDLとHDLがCETPを介して相互作用する状態においてはCETPとHDL-TG/PLには相関が見られない.これはCETPとLDLの相関にも同様の影響が見出されており,CETPの機能がVLDL代謝によって大幅に変動することが示唆される結果である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HDL組成異常の背景因子の解析は予定通り進行している.遺伝的背景の解析において胆汁酸受容体との関連は予想外であったが,近年この受容体がHDL代謝に影響するメカニズムが明らかになってきており,合致するものである可能性がある.またCETPとの関連は機序的に納得できるものであるが近年CETP阻害薬が臨床応用間近にまで開発されており,HDL-CだけではなくHDL組成における影響を考える重要な知見を見出していると考えている.また前向き長期予後研究の解析も進んでおり,研究期間内に結果を確認出来るものと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
PROCAM研究ではHDL-Cが糖尿病発症の予測因子であると報告しているが,HDL組成異常がさらに耐糖の障害の進展を予見できる可能性を前向き研究の集団において解析を勧める.また横断的研究で認められたHDL組成異常と胆汁酸受容体多型との関連が,同前向き集団においても遺伝的背景として影響をあたえているかを評価する.またCETPタンパク量とHDL組成異常にはVLDL過剰の状態において相関を認めているが,本邦で高頻度であるCETP欠損症においてどのように規定されているのかを検討する.またLDL過剰の状態であるFHではVLDLとの相対的な競合のバランスが変化していると予想される.多数のFH患者を用いHDL組成異常の影響を検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子解析および血清脂質の分析の試薬及び消耗品.成果学会発表および論文校正などが見込まれる.当該年度3月には大学施設の引っ越しがあったことも関連し実験スケジュールの都合から49,845円の未使用額があるが,研究内容は年度を越えて連続しており引き続き翌年度以降に請求する研究費と合わせ研究を遂行する.
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