研究課題
予想に反し冠疾患予防における治療による高比重リポ蛋白(HDL)C上昇の治療的意義は明らかでなくHDLの組成変化が冠疾患発症に係わる可能性がある.本研究はHDL組成異常としてHDL-TG/HDL-PL比が種々の動脈硬化リスクと有意の相関が見られることを明らかにした. HDL-TG/PL比は血清総TGとも相関するが,むしろHbA1cや慢性腎疾患との相関が強かった.本邦ではHDL-C上昇とLDL-C低下をもたらすCETP欠損症が高頻度であるが,動脈硬化に及ぼす影響は未だに議論がある.冠疾患高リスク群の検討では,血中CETP蛋白量はHDL-TG/PLと有意の正相関を示し,またLDL-Cとも強い正相関を示した.脂質異常症を伴う冠疾患高リスク群において冠動脈造影による検討を行い,HDL-TG/PL比は冠動脈硬化症の重症度と正の相関が見られており,さらに本邦に高頻度のCETP遺伝子変異保持者では冠動脈硬化所見は有意に軽症であることを報告した.遺伝子解析によるCETP欠損変異保持者ではHDL-TG/PL比は有意に低値であった.同様の検討を家族性高コレステロール血症(FH)患者で行ったが,FH群においてはHDL-C高値,LDL-C低値であったが,HDL-TG/TG比は全く差が見られず,冠動脈造影所見では有意の差は確認されなかった.HDL組成の変化の有無がFHおよび非FHのCETP遺伝子変異と冠動脈硬化症の関連の相違に影響している可能性がある.またFHの遺伝子診断を行いPCSK9機能亢進型遺伝子変異はLDLR遺伝子変異より有意にTG高値であったが,HDL組成を検討したところLDLR遺伝子変異によるFHと比較し有意のHDL組成変化は認められなかった.また動脈硬化で上昇する可溶性LR11の検討ではHbA1cおよびHDL-TG/PL,FHのアキレス腱黄色腫の重症度と相関が見られた.
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Clinical Biochemistry
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J Diabetes Res
巻: 2013 ページ: 143515
10.1155/2013/143515