VLDL受容体はLDL受容体とその構造上の相同性が高いが、TGリッチリポ蛋白(アポ E)のみを認識しLDL(アポB)を認識しない特異なリガンド特異性をもつ受容体蛋白である。組織分布はLDL受容体が肝臓を中心に幅広い臓器に発現されているのに対して、VLDL受容体は心臓・筋肉・脂肪酸の脂肪酸代謝の活発な臓器に高発現されている。我々はVLDL受容体遺伝子が選択性スプライシング機構によりO-結合糖ドメインの有無による全長型の1型VLDL受容体とO-結合糖ドメインが欠如する2型VLDL受容体の2種類の蛋白が産生されていることを報告してきた。今回の研究にて以下の事が明らかになった。 1.2型VLDL受容体は膜安定性が悪く、培地中に分泌される。この為、1型VLDL受容体と比較してβ―VLDLの細胞内取り込みが悪い。2.単球からマクロファージ細胞への分化過程で、VLDL受容体mRNAレベルの変化はないが蛋白レベルで1型VLDL受容体優位にスイッチされる。この事は、RT-PCRにても確認された。3.心筋VLDL受容体は成長と共に1型VLDL受容体優位にスイッチされることが確認された。4.1型および2型VLDL受容体cDNAをアデノウイルスにて肝臓に高発現させると、2型VLDL受容体cDNA遺伝子導入時のみに血中にVLDL受容体蛋白が分泌されていることを確認した。5.培地中に分泌された2型VLDL受容体蛋白はアポEと結合することを免疫沈降法で確認した。6.ヒト血中分泌型VLDL受容体の存在を免疫沈降法で確認した。7.ヒト血中分泌型VLDL受容体測定法(2抗体ELLISA法)を確立した。正常者5.29±1.41ng/ml、糖尿病者7.80±3.64ng/mlで、糖尿病者において血中分泌型VLDL受容体濃度が高値である症例が存在することを確認した。
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