研究課題
n-3 多価不飽和脂肪酸(PUFAs)がKeep1-Nrf2システムを活性化する分子機構を明らかにする。我々は、既にDHA、EPAより非酵素的に切断されて生成する(ペルオキシ酸化代謝物)4-hydroxy hexenal (4HHE) がDHAによる血管内皮細胞に対する抗酸化活性と類似する作用を持つことを明らかにしてきた。さらにこの4HHEがn-3PUFAsが示すKeep1-Nrf2システム活性化の本体ではないかと考え本年度の検討を行った結果、以下の点が明らかになった。1)n3PUFAs の中でもDHAはEPAよりも強いKeep1-Nrf2システムの活性化作用を示すが、DHAおよびEPAを培養ヒト血管内皮細胞と孵置して生成される4HHEの量を比較すると、DHAより生成される量がEPAより生成される量よりも有意に多いこと。2) DHAによるKeep1-Nrf2システムの活性化に阻害作用を示すNアセチルシステイン(NAC)は、DHAを培養ヒト血管内皮細胞と孵置して生成される4HHEの量を減少させること。3)さらにNACは4HHEによるKeep1-Nrf2システムの活性化にも阻害作用を示すことが明らかになった。また、4)人の血清においてもMS解析を用いた4HHE濃度測定系を構築することができ、血中DHA濃度と4HHE濃度に相関関係があることが明らかになった。これらの点から、n-3PUFAsが示す、Keep1-Nrf2システムの活性化およびそれに伴う抗酸化活性の促進にはn-3PUFAsのペルオキシ酸化代謝物である4HHEを介する作用であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
交付申請に記載した平成23年度の目標であるn-3 多価不飽和脂肪酸(PUFAs)がKeep1-Nrf2システムを活性化する分子機構を明らかにするという点に関して、n-3PUFAsのペルオキシ酸化代謝物である4HHEの役割と重要性を示す研究成果を得られたことからおおむね目標を達成できたと考えている。一方、in vivoでの血管障害に対する防御作用の検討は動物実験の成果が遅れているものの、人の血清において4HHE濃度を測定する系を構築することができた結果、今後様々な病態での検討をおこなうことが可能になり大きな成果になった。
研究計画に基づいてNrf2ノックアウトマウスを用いた検討を進める。さらに、人および動物での血清において4HHE濃度を測定する系を構築することができたので、血管内皮機能と血清4HHE濃度の関連や生体での酸化ストレスマーカーと血清4HHE濃度の関連を明らかにする。
昨年度は勤務地が滋賀医科大学から鹿児島大学に変わった関係から、様々な手続き上、動物を用いた研究が中断し、その関係から使用しない研究費が生じた。この繰り越した予算を用いて新たに、動物および人血清での4HHE濃度と生体の抗酸化活性の関連を明らかにしてゆきたい。
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