研究課題
Keep1-Nrf2システムの活性化が細胞/組織の抗酸化活性を高めることにより血管内皮障害の改善に寄与することを動物実験にて明らかにする。これまでの検討から、Nrf2ノックアウトマウスではn-3 PUFAs(魚油食)を投与してもNrf2依存性の遺伝子発現であるhemeoxygenase-1(HO-1)の発現が誘導されないことが確認できた。そこで、本年度の検討ではこのNrf2ノックアウトマウスおよび対照マウスであるC57BL6マウスの胸部大動脈を用いて、魚油食による内皮機能改善効果を検討した。その結果、1)対照マウスでは4週間の魚油食の投与により、胸部大動脈のアセチルコリンによる内皮依存性の拡張反応は対照食に比較して有意に亢進した。2)一方、Nrf2ノックアウトマウスでは4週間の魚油食の投与によっても胸部大動脈のアセチルコリンによる内皮依存性の拡張反応は対照食に比較して何ら変化を示さなかった。3)さらに、NOドナーを用いた血管平滑筋を直接刺激した血管拡張反応では対照マウスおよびNrf2ノックアウトマウスにおいても、ともに魚油食の投与によっても対照食となんら変化を示さなかった。以上の検討から、魚油食はKeep1-Nrf2システムの活性化を介して血管内皮においてHO-1などの抗酸化酵素の誘導を行うのみならず、Keep1-Nrf2システムの活性化を介して内皮依存性の血管弛緩反応を促進することにより、内皮機能の改善効果を示すことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
Nrf2ノックアウトマウスの胸部大動脈を用いた内皮機能の検討が本年の最大の課題であり、この点の検討ができたので計画はおおむね順調に進行していると考えられる。
今後は人での検討においても、動物実験で得られたn-3多価不飽和脂肪酸の抗酸化機能および内皮機能の改善作用を明らかにする。
研究計画初年度に勤務地が変更になったことから、研究計画を変更して研究を進めざるを得なくなり使用しない研究費が生じたが、この繰り越し予算を用いてヒト血清を用いた酸化マーカーの測定を行い、人での検討を推進したい。
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