研究課題/領域番号 |
23591338
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
辻田 麻紀 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10253262)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | HDL / cholesterol / urea |
研究概要 |
小腸は肝臓と同様に生体内においてHDL新生機構の第一段階といえるapolipoprotein A-Iの産生・分泌を行う重要な細胞である。Apo A-Iは細胞外へpro-apo A-Iとして分泌され、細胞表面に局在するABCA1と相互作用することで円盤状のHDLが産生される。本年度はvitroでの実験に用いるヒト並びにマウス血漿Apo A-Iを得るため、ヒトApo A-Iの古典的な方法を用いてそれぞれの血漿よりApo A-Iを単離した。血漿よりHDL画分を超遠心法で分離し、蒸留水に対して透析後、凍結乾燥法にて粉末標品を得た。有機溶媒にて脱脂後、6M Ureaを含む緩衝液に可溶化し、DE-52イオン交換カラムクロマトグラフィーで精製した。この可溶化状態において異なる等電点を示すApo A-Iが観察された。ヒトでは2つのsubtype、マウスでは3つのsubtypeがDE-52カラムにて単離された。コレステロール搬出に対するこれらのsubtypeのapoA-Iの効果をマウス腹腔泡沫化マクロファージ細胞にて比較した。ヒトでは2つのsubtypeに差はなかったが、一方、マウスでは3つのsubtypeの内最も高いpIを有するapoA-Iは殆どコレステロール搬出を行わず、また細胞内のACATが作用するコレステロールコンパートメント低下作用においてもその効果は失われていた。これらのsubtypeのapoA-Iは分子量を同じくするがUreaを含む緩衝液中では等電点が異なる。この分離を簡易に行うためurea中で のPAGE法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスHDL中主要な構成タンパク質であるapoA-Iに複数のsubtypeを同定したため、その一次構造上の違いとHDL粒子としての均一性についての検証が本年の実験の中心となった。
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今後の研究の推進方策 |
逆コレステロール輸送経路の中で、胆汁酸を介さないTransintestinal cholesterol efflux (TICE)経路の研究成果に関してLDL受容体並びにその阻害調節タンパク質のPSCK9の変動と一致するTICEの変動が欧州の研究グループより本年度報告されている。この経路の存在は確認されたものの、細胞内のコレステロール量により発現制御されるLDL受容体を介したこの排出経路がvivoにおいて実質的な排出量を説明できるかなど不明な点が多い。本研究テーマではHDLコレステロールの小腸を介した搬出経路としてSR-B1受容体による経路を予想し、SR-B1の局在並びにコレステロール搬出の測定を研究テーマとしている。こちらの経路についての報告はまだなく、TICEの主経路として有望であると推測する。
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次年度の研究費の使用計画 |
血漿HDL以外に今回分離したapoA-I subtypeそれぞれを構成タンパク質とする再構成HDL粒子をコレステリルエーテルまたはdiIにて標識し、血中HDLからのコレステロールの輸送について検証する。マウス小腸組織におけるSR-B1の局在の同定・小腸組織の免疫染色。実験動物を用いた小腸細胞へのHDLコレステロールの搬入の検討を行う。
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