研究課題/領域番号 |
23591338
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
辻田 麻紀 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10253262)
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キーワード | HDL / 小腸 / TICE |
研究概要 |
小腸吸収上皮細胞では食事由来のコレステロール並びに中性脂肪をApoB48を構成タンパク質とする細胞内粒子へ組み込みキロミクロンとしてリンパへ放出するが、肝臓と同様にHDL新生反応の第一段階であるapoA-Iを分泌し、基底膜上のABCA1と相互反応することでHDLの新生反応を行う。肝細胞と小腸吸収上皮細胞はこれ以外にも多くの共通の蛋白質の発現や機能を有していることが現在までに明らかにされている。 今回の我々の課題では小腸吸収上皮細胞への循環中のHDL-CEの輸送機構について検討した。肝実質細胞ではHDL-CEの主要な輸送タンパク質はSR-BIであり、小腸吸収上皮においてもその欠損マウスでコレステリルエステルの輸送が低下することからその機能が予想される。小腸上皮細胞でのSR-BIの発現は現在までの報告は全て消化管内からのコレステロールの取り込みのみであり、この場合はアピカル側での発現が予想される。今回我々は蛍光免疫組織染色によりSR-BIが小腸吸収上皮細胞基底膜側にも強く発現している結果を得た。これはSR-BIの小腸吸収上ににおける循環中HDLコレステロールの新規の排出経路を示すものである。 SR-BI欠損マウスを用いたTICE(Trans intestinal cholesterol efflux)の検討は既に欧米で始まっているが、SR-BI欠損マウスは血漿中に大型の異常なHDLを有し、また代償的な代謝経路の活性も予想されるためいずれも期待する結果が得られていない。今後は小腸吸収上皮細胞特異的なSR-BIの欠損マウスを作成し、本経路の確認が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小腸吸収上皮細胞の基底膜に確認できたSR-BIの in vivo での機能を確認する為、SR-BI欠損マウスの繁殖を試みているが、ステロイド産生臓器への血漿からのコレステロール輸送が障害されているため、十分な個体数を確保できていない。
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今後の研究の推進方策 |
小腸吸収上皮細胞でのSR-BIの基底膜での発現が確認できたのは小腸の上部である。飼育飼料による小腸でのキロミクロンの質の変化以外に近年では新生HDL量も変動することが報告されている(J Lipid Res, 2014, Yamaguchi et al.)。食事に由来する基底膜SR-BI発現の変化の有無、HDL新生反応との関連を検討する。 SR-BI欠損マウスを用いたTICE(Trans intestinal cholesterol efflux)の検討は既に欧米で始まっているが、SR-BI欠損マウスは血漿中に大型の異常なHDLを有し、また代償的な代謝経路の活性も予想されるためいずれも期待する結果が得られていない。今後は小腸吸収上皮細胞特異的なSR-BIの欠損マウスを作成し、本経路の確認が必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究年度2年目であるH24年度に研究室の大がかりな改装・整備が行われた。それに伴う研究時間の短縮により予定されていた本課題遂行に遅延が生じている。その結果最終年度において必要とされる成果が獲得されていない状況である。 未使用額は実験動物繁殖の為の動物飼育費用並びに特殊飼育飼料調製費、蛍光免疫組織染色の為の試薬の購入、印刷物の出版費用を予定している。
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