研究課題/領域番号 |
23591339
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
大須賀 淳一 自治医科大学, 医学部, 准教授 (10334400)
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研究分担者 |
石橋 俊 自治医科大学, 医学部, 教授 (90212919)
野牛 宏晃 自治医科大学, 医学部, 非常勤講師 (60348018)
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キーワード | マクロファージ / コレステロールエステル / 泡沫化 / 粥状動脈硬化症 |
研究概要 |
本研究は、マクロファージの泡沫化に関与する諸分子の中でもコレステロールエステル水解酵素(NCEH1)に着目して、ヒト粥状動脈硬化へのNCEH1の関与を生化学的、分子生物学的、遺伝学的手法で解析するものである。NCEH1欠損マウスでは動脈硬化の進展が認められたが、ヒトにおいて欠損症は同定されていない、また、欠損した既存の細胞株もない。そこで、NCEH1の酵素活性の阻害剤であるAS115を用いて酵素活性を抑制して検討した。まず、AS115による酵素活性の抑制が欠損モデルと同等の効果があるのかを調べるため、野生型マウスの腹腔マクロファージに添加した。AS115の添加により欠損モデルと同様にコレステロールエステルの蓄積が観察された。25水酸化ステロールはNCEH1欠損マクロファージのアポトーシスを小胞体ストレスを介して誘導する。従って、NCEH1欠損マウスの動脈硬化には、単にコレステロールエステルの蓄積だけでなく、酸化ステロールの関与が考えられた。実際に、25水酸化ステロールのエステル体は小胞体に存在し、NCEH1の基質になることも証明した。予備的ではあるが、アシルCoAコレステロールアシルトランスフェラーゼ1(ACAT1)の欠損マウスをNCEH1欠損マウスと交配することにより、動脈硬化の進展は抑制されることが示されている。酸化ステロールのエステル体もACAT1で生成される可能性がある。酸化ステロールエステルから小胞体ストレスひいてはアポトーシスへの経路に関わる分子機序が明らかにして泡沫化を抑制する新規治療の開発につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
M1/M2マクロファージの分離に必要なFACSのセットアップに時間がかかった。NCEH1の発現量や活性に関して、M1/M2マクロファージに分けて行った研究はこれまでなく、意義は高いと考えている。また、動脈硬化巣におけるM1/M2マクロファージのNCEH1発現の定量法はまだ確立していない。
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今後の研究の推進方策 |
ACAT1とNCEH1の二重欠損マウスの動脈硬化に関する実験を完遂する。酸化ステロールエステルによる小胞体ストレス、アポトーシス誘導のメカニズムについて引き続き検討する。また、マクロファージのサブタイプによるNCEH1の発現、活性の差異について調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
マクロファージ特異的NCEH1トランスジェニックマウスを作成する。同時に、ホルモン感受性リパーゼなどの他のコレステロールエステル分解酵素のトランスジェニックマウスも作成する。これによりNCEH1の過剰発現がin vivoにおいて治療的意義があるかどうかを検証したい。
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