研究課題
(1) 動脈硬化発症における細胞接着斑タンパク質hydrogen peroxide-inducible clone-5 (Hic-5)の役割;アポE/Hic-5ダブルノックアウトマウス(DKO)の大動脈動脈硬化病変はアポEノックアウトマウス(apoE-KO)に比較し60%抑制された。この分子機構を検討するため、DKOの大動脈を単離してヒト単球由来THP-1細胞の大動脈表面への接着数を検討すると、apoE-KOの大動脈へのTHP-1細胞接着数に比し、60%抑制された。以上より、大動脈内皮細胞の単球接着に関する機能がHic-5欠損により低下していることが示唆された。apoE-KOならびにDKOの腹腔マクロファージを採取し、アセチル化LDLによる泡沫化を検討したが、両者に差はなかった。(2) 腹部大動脈瘤(AAA)発症におけるHic-5の役割;アンジオテンシンII (AngII)によってアポE欠損マウスに誘導されるAAAモデルを用いて、Hic-5の役割を検討した。ApoE-KOにAngIIを4週間持続皮下注すると、87%(13/15)にAAAが形成されたが、DKOでは11%(1/9)しかAAAが形成されなかった。実験期間中、ApoE-KOでは40%(6/15)がAAA破裂のため死亡したが、DKOでは死亡例を認めなかた。血管平滑筋細胞に発現するHic-5の役割を検討するために、タモキシフェン誘導性の平滑筋細胞特異的Hic-5欠損マウス(SM-Hic-5 KO)を作製した。タモキシフェン投与apoE-KOはAngII投与により71%(5/7)にAAAが発生したが、タモキシフェン投与SM-Hic-5 KOでは13%(1/8)にAAA発生を認めたのみであった。以上より血管平滑筋細胞に発現するHic-5がAAA発症、進展に重要な役割を持つことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
(1) 動脈硬化発症におけるHic-5の役割については、Hic-5欠損マウスの内皮細胞機能の変化によって動脈硬化症の進展が抑制されていることが明らかとなった。(2) 腹部大動脈瘤(AAA)の発症には、血管平滑筋細胞に発現するHic-5が重要な役割を果たすことが明らかとなった。
(1) 動脈硬化発症におけるHic-5の役割;Hic-5欠損マウスの血管内皮機能の変化について、細胞接着分子の発現をウェスタンブロットで検討する。Hic-5欠損マウス由来の内皮細胞の趙微形態学的検討を行う。さらにsiRNA法を用いた培養ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)のHic-5ノックダウンにより、HUVECにおける接着分子の発現、HUVECへの単球の接着がどう変化するかを検討する。(2) 腹部大動脈瘤(AAA)発症におけるHic-5の役割;血管平滑筋細胞の細胞内情報伝達に置けるにおけるHic-5の役割を検討する。またAAA発症の鍵を握るマトリックスメタロプロテイナーゼ発現に対するHic-5の役割を検討する。
マウスの飼育・解析、培養細胞の解析のための消耗品に用いる。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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American Journal of Physiology Heart and Circulatory Physiology
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