Hic-5は細胞接着斑タンパク質の一つであり、我々は世界に先駆けてHic-5ノックアウトマウスの作成に成功した(Kim-Kaneyama JR et al. J Mol Cell Cardiol 2011;50:77-88)。Hic-5は平滑筋細胞に高発現するほか、血管内皮細胞にも発現がみられる。本研究では、内皮細胞・単球の接着におけるHic-5の役割と動脈硬化病変形成におけるHic5の病態生理学的意義を検討した。 (1) Hic-5/apoE二重欠損マウスから得た大動脈をTNF-alphaで刺激してTHP-1細胞の結合を検討すると、apoE単独欠損マウスの大動脈に比し、THP-1細胞の結合は40%に減少していた。 (2) 電子顕微鏡による検討では、apoE欠損マウスから得た内皮細胞には微絨毛様構造が多数みられたが、Hic-5/apoE二重欠損マウスから得た内皮細胞では微絨毛様構造の形成が10%以下に抑制されていた。 (3) 培養ヒト臍帯静脈内皮細胞のHic-5発現をsiRNAでノックダウンすると、微絨毛様構造の数やTHP-1細胞の付着が減少し、逆にアデノウイルスを用いてHic-5を過剰発現すると両者とも増加した。 (4) Hic-5/apoE二重欠損マウスの大動脈動脈硬化病変面積は、apoE単独欠損マウスに比し40%に減少していた。 以上より、Hic-5は血管内皮細胞の微絨毛様構造の形成や単球の内皮細胞への付着、さらには動脈硬化病変形成に重要な役割を果たすことが示唆された。
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