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2011 年度 実施状況報告書

視床下部においてプロラクチン放出ペプチドがストレス性緊急応答を制御するメカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 23591343
研究機関東北大学

研究代表者

井樋 慶一  東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60232427)

研究分担者 布施 俊光  東北大学, 情報科学研究科, 助教 (50401039)
内田 克哉  東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40344709)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードCRF / ノルアドレナリン / プロラクチン放出ペプチド / 電気生理 / ラット / マウス
研究概要

生体がストレスに応答する緊急時に、下垂体前葉のACTH分泌を促すCRFと後葉から分泌されるバゾプレシン(AVP)は、共に、延髄から視床下部に投射するノルアドレナリン(NA)作動性ニューロンによって刺激される。このNAニューロンにはプロラクチン放出ペプチド(PrRP)が共存しており、最近の我々の研究によれば、外因性のPrRPが、視床下部におけるNA作用を促進する(Uchida et al, 2010)。これらの事実を総合すれば「生体がストレスにさらされた時、PrRPがNAと共に分泌され、CRF-ACTHとAVPを介して生体防御に働く」という仮説が自然に導かれる。本研究では、in vivoとin vitroの手法を用いてこの仮説を検証することを目的とする。 視床下部CRFニューロンへのPrRPの作用メカニズムを明らかにするためには、直視下に電気生理学的実験を行うことが極めて有用であるが、未だCRFニューロンの蛍光可視化動物は作成されていない。そこで我々は、CRF-Creマウスを作成した。このマウスとGFPレポーターマウスとの交配によりCRFニューロンを選択的に蛍光標識できるマウスを得ることができる。既に、CRF-CreマウスとX-galレポーターマウスとの交配により、CRFニューロン選択的にベータガラクトシダーゼの発現が確認されており、Creリコンビナーゼ活性がCRFニューロン選択的に発現することが証明された。今後CRFニューロンの機能を明らかにするためにCRF-Creマウスは極めて強力な実験ツールと考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

PrRPやNAを含め、CRFニューロンへの神経性入力の機能的意義を明らかにするためには、電気生理やカルシウムイメージング法などの細胞生理学的手法が不可欠である。しかしながら、これまでCRFニューロンを選択的に蛍光可視化できる動物は作成されていなかった。我々は世界で初めて、CRF遺伝子ターゲティング法を用い、CRFニューロンにCreリコンビナーゼをノックインしたマウス(CRF-Creマウス)の作成に成功した。実績概要に記した通り、CreリコンビナーゼがCRFニューロン選択的に発現しfloxed mouseとの交配により組換えを行うことができることが実証された。 また、パッチクランプアンプを新規購入し(物品費)、これを用いて視床下部急性スライスを用いたノルアドレナリンの作用をホールセルクランプ法により検討中である。 したがって、次年度にPrRPのCRFニューロンへの直接作用を細胞生理学的に検討するための準備は万端である。東日本大震災で動物を用いたin vivoの実験は立ち合遅れたが、それを補って余りある成果を上げることができた。

今後の研究の推進方策

まず、in vitroの実験系によりPVNにおけるPrRPの作用メカニズムを明らかにする。単一ニューロンの観察を行うためにパッチクランプ法を用いた電気生理実験を行うが、平行して、カルシウムインジケーターFura2を用い、細胞内カルシウム濃度のリアルタイム測定を行う。個々の神経内分泌ニューロンへの作用メカニズムばかりでなく、多数のニューロン活動の同時観測によりPVN内局所回路においてPrRPおよびNAが果たす役割が明らかにされる。我々の開発したCRFニューロン選択的蛍光可視化マウスは極めて強力なツールとなるであろう。 次に、延髄のPrRP含有ニューロンが直接視床下部に投射すること、この神経路がストレスにより活性化され視床下部内でPrRPが分泌されることをin vivoの実験系で明らかにする。ストレスの種類によってPrRP分泌に及ぼす影響に違いが認められる可能性や、PrRPがCRFやAVP遺伝子発現に及ぼす分子メカニズムについても検討を行う。

次年度の研究費の使用計画

1. PVNおよびSONの大細胞におけるPrRPとNAの作用のin vitroでの検討 ラットまたはマウスを用い、視床下部急性スライスを作成する。NA添加によるEPSPの増加とfiringおよびEPSC(あるいはEPSC)の増加を確認し、同様にPrRPを添加して観察する。次に、NAとPrRPの相互作用を検討。動物購入、生理実験試薬、ガラス電極、などの物品費と動物飼育費が必要である。2. in vivoにおけるPrRPニューロン投射神経路の同定 ラットまたはマウスを用い、逆行性トレーサーにより延髄から視床下部へのPrRPニューロンの投射神経路を明らかにする。動物、試薬、ディスポーザブル器具などの物品および動物飼育費が必要である。3. 研究成果発表 得られた成果を国内外の学会で報告するための旅費が必要である。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (14件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 気になる脳部位 視床下部室傍核2012

    • 著者名/発表者名
      井樋慶一
    • 雑誌名

      分子精神医学

      巻: 12 ページ: 37-41

  • [雑誌論文] Targeting of locus ceruleus noradrenergic neurons expressing human interleukin-2 receptor a-subunit in transgenic mice by a recombinant immunotoxin anti-Tac(Fv)-PE38: a study for exploring noradrenergic influence upon anxiety-like and depression-like behaviors2011

    • 著者名/発表者名
      Itoi K, Sugimoto N, Suzuki S, Sawada K, Das G, Uchida K, Fuse T, Ohara S, Kobayashi
    • 雑誌名

      Journal of Neuroscience

      巻: 31 ページ: 6132-6139

    • DOI

      10.1523/JNEUROSCI.5188-10.2011

    • 査読あり
  • [雑誌論文] バソプレシンおよびオキシトシンの中枢作用と創薬ターゲットとしてのバソプレシン受容体,オキシトシン受容体の意義2011

    • 著者名/発表者名
      井樋慶一、布施俊光、内田克哉
    • 雑誌名

      Fluid Management Renaissance

      巻: 2 ページ: 134-141

  • [雑誌論文] 睡眠障害と視床下部‐下垂体‐副腎系2011

    • 著者名/発表者名
      井樋慶一、杉本直哉、布施俊光
    • 雑誌名

      内分泌・糖尿病・代謝内科

      巻: 32 ページ: 249-254

  • [学会発表] Targeting of locus coeruleus noradrenergic neurons by immunotoxin-mediated cell targeting: noradrenergic influence upon anxiety-like and depression-like behaviors2011

    • 著者名/発表者名
      Keiichi Itoi, Naoya Sugimoto, Keisuke Sawada, Gopal Das, Katsuya Uchida, Toshimitsu Fuse, Shinji Ohara, Kazuto Kobayashi
    • 学会等名
      21st Neuropharmacology Conference
    • 発表場所
      Washington DC, USA
    • 年月日
      November 10-11 2011
  • [学会発表] GABAインターニューロン形成における甲状腺ホルモンの新規作用機序2011

    • 著者名/発表者名
      内田克哉、田口雄亮、佐藤千佳、宮崎英隆、布施俊光、小林哲也、井樋慶一
    • 学会等名
      第34回日本神経科学大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、横浜
    • 年月日
      2011年9月17日
  • [学会発表] トランスジェニックマウスを用いたヒトIL-2受容体alphaサブユニット発現青斑核ノルアドレナリン作動性ニューロンターゲティング:ノルアドレナリン作動性ニューロンが不安様行動およびうつ様行動に及ぼす影響2011

    • 著者名/発表者名
      井樋慶一、杉本直哉、鈴木恵綾、澤田圭介、ダスゴーパル、内田克哉、布施俊光、大原慎司、小林和人
    • 学会等名
      第34回日本神経科学大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、横浜
    • 年月日
      2011年9月15日
  • [学会発表] 大震災から学ぶ:サイエンスに対する影響と包括脳ネットワークの役割2011

    • 著者名/発表者名
      井樋慶一
    • 学会等名
      包括型脳科学研究推進支援ネットワーク夏のワークショップ(招待講演)
    • 発表場所
      神戸国際会議場
    • 年月日
      2011年8月21日
  • [学会発表] ストレス伝達機構解明へのアプローチ2011

    • 著者名/発表者名
      井樋慶一
    • 学会等名
      第84回日本内分泌学会教育講演(招待講演)
    • 発表場所
      神戸国際会議場、神戸
    • 年月日
      2011年4月22日
  • [学会発表] 成長遅延マウスにおける大脳皮質および海馬のガンマアミノ酪酸作動性インターニューロン数の減少は甲状腺ホルモンの投与で回復する2011

    • 著者名/発表者名
      内田克哉、田口雄亮、宮崎英隆、佐藤千佳、小林哲也、井樋慶一
    • 学会等名
      第38回日本神経内分泌学会
    • 発表場所
      都道府県会館、東京
    • 年月日
      2011年11月26日
  • [学会発表] AP1ファミリー転写因子(Fos/Jun)がCRH遺伝子転写活性に及ぼす影響2011

    • 著者名/発表者名
      岩崎泰正、蔭山和則、Gopal Das、西山充、布施俊光、内田克哉、須田俊宏、吉田昌則、井樋慶一
    • 学会等名
      第38回日本神経内分泌学会
    • 発表場所
      都道府県会館、東京
    • 年月日
      2011年11月26日
  • [学会発表] バセドウ病患者抗甲状腺剤加療後の血中肝胆道系酵素値の経時的推移2011

    • 著者名/発表者名
      井樋慶一, 森弘毅
    • 学会等名
      第54回日本甲状腺学会
    • 発表場所
      大阪国際交流センター、大阪
    • 年月日
      2011年11月22日
  • [学会発表] CRH神経細胞可視化を目的としたCRH-Creノックインマウスの開発2011

    • 著者名/発表者名
      金子卓司、布施俊光、山崎真弥、阿部学、夏目里恵、崎村建司、井樋慶一
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、横浜
    • 年月日
      2011-12-13
  • [学会発表] A FACS-array analysis of transcripts expressed in fetal pontine noradrenergic neurons and identification of transcription factors regulating the enzyme genes involved in catecholamine symteesis2011

    • 著者名/発表者名
      Yokohashi H, Fuse T, Uchida K, Sawada K, Aiyoshizawa A, Das G, Tomita H, Tanaka C, Konishidta K, Kobayashi K, Iwasaki Y, Itoi K
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、横浜
    • 年月日
      2011-12-13
  • [学会発表] Stress-induced c-Fos and FosB expression in the paraventricular and supraoptic nuclei of the rat hypothalamus2011

    • 著者名/発表者名
      Das G, Uchida K, Itoi K
    • 学会等名
      第38回日本神経内分泌学会
    • 発表場所
      都道府県会館、東京
    • 年月日
      2011-11-26
  • [学会発表] 脳内ノルアドレナリン作動性ニューロン選択的転写因子の同定と、それらがカテコールアミン合成酵素遺伝子プロモーター活性に及ぼす影響の検討2011

    • 著者名/発表者名
      澤田圭介、横橋悠、岩崎泰正、内田克哉,布施俊光, Gopal Das、相吉澤洋、小林和人、井樋慶一
    • 学会等名
      第38回日本神経内分泌学会
    • 発表場所
      都道府県会館、東京
    • 年月日
      2011-11-26
  • [学会発表] Identification of novel transcription factors for catecholamine gene expression based upon the comprehensive analyses of transcripts in fetal pontine noradrenergic neurons by FACS-array technology2011

    • 著者名/発表者名
      Itoi K, Uchida K, Fuse T, Iwasaki Y, Yokohashi H, Okazaki A, Sawada K, Das G, Kobayashi K, Tomita H, Tanaka C, Kinoshita K, Ohara S
    • 学会等名
      Annual Meeting of the Society for Neuroscience
    • 発表場所
      Washington DC, USA
    • 年月日
      2011-11-16
  • [学会発表] 橋領域ノルアドレナリン作動性ニューロン発現遺伝子の網羅的解析に基づく新規カテコールアミン合成酵素調節因子の同定―チロシン水酸化酵素プロモーター下緑色蛍光蛋白質発現マウス胎仔を用いた検討2011

    • 著者名/発表者名
      横橋悠、内田克哉、布施俊光、岩崎泰正、木下賢吾、岡崎彰、ダスゴーパル、澤田圭介、田中千晶、富田博秋、大原慎司、小林和人、井樋慶一
    • 学会等名
      第34回日本神経科学大会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜、横浜
    • 年月日
      2011-09-15
  • [備考]

    • URL

      http://www.bio.is.tohoku.ac.jp

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公開日: 2013-07-10  

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