研究課題/領域番号 |
23591343
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井樋 慶一 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60232427)
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研究分担者 |
布施 俊光 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (50401039)
内田 克哉 東北大学, 情報科学研究科, 助教 (40344709)
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キーワード | CRF / ノルアドレナリン / 電気生理 / ラット / マウス |
研究概要 |
生体がストレスに応答する緊急時に,下垂体前葉のACTH分泌を促すCRFと後葉から分泌されるバゾプレシン(AVP)は,共に,延髄から視床下部に投射するノルアドレナリン(NA)作動性ニューロンによって刺激される.このNAニューロンにはプロラクチン放出ペプチド(PrRP)が共存し,外因性のPrRPは視床下部におけるNA作用を促進する(Uchida et al., 2010).本研究では,生体がストレスにさらされた時,PrRPがNAと共に分泌され,CRF-ACTHとAVPを介して生体防御にはたらく,という仮説を検証することを目的とする. 本研究の実験ツールとして,我々は新たなマウスモデルを2系統作成した.一つはCRF遺伝子に改良型黄色蛍光タンパク質(Venus)をノックインしたマウス(CRF-Venus)である.このマウスの視床下部急性スライスを用いたwhole cell clamp法により,グルタミン酸作動性ニューロンやガンマアミノ酪酸(GABA)作動性ニューロンがCRFニューロンに直接入力することが明らかにされた.NA入力に関しても検討を行った.これらが直接的入力か,あるいはグルタミン酸作動性あるいはGABA作動性ニューロンを介した間接的な作用かについて現在検討を続けている.もう一つのマウスモデルはCRF-Creで,これはCRF遺伝子にCreリコンビナーゼをノックインしたものである.このマウスとX-galレポーターとの交配によってCreリコンビナーゼがCRFニューロン選択的に発現し,そこで機能することが昨年度明らかにされたが,今年度はGFPレポーターとの交配によりCRFニューロン選択的にGFPを発現したマウスを作成した.CRF-Venusマウスと比較し,CRFニューロンでのGFP発現が強く,また,共存率も大きいため,CRF標識マウスとしてはより優れたツールとなりうる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はCRF-VenusおよびCRF-Creマウスの2系統の遺伝子改変マウスが作成された.後者とGFPレポーターマウスとの交配により,CRF選択的GFP発現マウスが作成された.これらのマウスは視床下部のCRFニューロンを蛍光可視化し,電気生理学的検討を行うための優れたツールである.しかしながら,視床下部室傍核のCRFニューロンは脆弱であり,再現性よく確実にパッチクランプ法による記録をおこなうのが容易でない.そこで,視床下部電気生理を行っている国内外の研究機関からの情報供与を受け,現在システムの改善を行っているところである.システム改良に成功すれば,実験速度が格段に上がり,順次結果が得られるものと思われる.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の最大の目標は,電気生理のシステムを改良し,蛍光標識されたCRFニューロンから安定した記録をとることができるようなシステムを構築することである.現在,バッファー溶液,マニピュレーター,スライス作成方法などについての改良を行っているところであるが,安定した記録が取れるようになった時点で,まず,NAのCRFニューロンへの作用とそのメカニズムの検討をおこなう.次に,PrRPはじめペプチドの作用を検討する.最後に糖質コルチコイドのはたらきを検討し,その過剰状態や欠乏状態においてNA入力のはたらきに違いがあるか否かを検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
1. マウスやラットの飼料,動物飼育費などが必要である. 2. 遺伝子改変動物の解析を行うための分子生物学試薬が必要である. 3. 電気生理を行うための試薬,ガラス電極,酸素ガスなどが必要である. 4. 免疫組織化学のための試薬が必要である. 5. 得られた成果を国内外の学会で報告するための旅費が必要である.
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