研究課題
生体がストレスに応答する緊急時に,下垂体前葉のACTH分泌を促すCRFと後葉から分泌されるバゾプレシン(AVP)は,共に,延髄から視床下部に投射するノルアドレナリン(NA)作動性ニューロンによって刺激される.このNAニューロンにはプロラクチン放出ペプチド(PrRP)が共存しており、最近の我々の研究によれば、外因性のPrRPが、視床下部におけるNA作用を促進する(Uchida et al, 2010).これらの事実を総合すれば「生体がストレスにさらされた時、PrRPがNAと共に分泌され、CRF-ACTHとAVPを介して生体防御に働く」という仮説が導かれる。本研究の目的はこの仮説を検証することである.本研究の実験ツールとして新たな遺伝子改変マウスが作成された.すなわち,相同組換えによりCRF遺伝子座にVenus(強化型黄色蛍光タンパク質)が挿入されたCRF-Venusノックインマウス(CRF-Venus)である.CRF-Venusの脳内でVenus発現は概ねCRF発現に一致して認められ,糖質コルチコイド欠乏状態における検討からVenus発現ニューロンは生理的なCRFニューロンの性格を示すことが確認された.CRF-Venusマウスの視床下部急性スライスを作成し,蛍光顕微鏡で直視下にVenus発現ニューロンを観察し電気生理学実験を行った.その結果, CRFニューロンへのグルタミン酸作動性およびガンマアミノ酪酸(GABA)作動性入力の存在が証明された.また,NAはグルタミン酸作動性ニューロンを媒介としてCRFニューロンを刺激性に調節することが明らかにされた.PrRPをはじめとするNAと共存するペプチドがCRFニューロンに及ぼす影響を検討中である.
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