研究概要 |
昨年までに樹立した各種耐性細胞のうち、細胞内リン酸化経路が関与している可能性が考えられるType 1, Type 2, Type 3について、ERやその標的遺伝子、PgR, pS2, EGR3, Cyclin D などの発現や、Her family、MAPK系やPI3K-AKT系の蛋白の発現やリン酸化を解析した。また、網羅的リン酸化プロテオミックス解析法を用いてType 1細胞内の蛋白のリン酸化状態を親株と比較検討した。その結果、Type 1およびType 3細胞は、PI3K, Akt経路によってERがリン酸化され、活性化されている可能性が示された(論文投稿中)。また、これらの細胞はタモキシフェンやフルベストラントなどの抗エストロゲン薬やHer familyを標的とした、各種分子標的治療薬に対する感受性を示した。このような機序を持つ耐性症例には、2次治療としてこれらの薬剤が有用である可能性が示唆される。さらに、Type 4細胞はエストロゲン様活性をもつステロイドである3β-androstandiolの産生が増強され、ERに対するリガンドとして作用していることが示唆された(論文投稿中)。また、Type 5細胞は、硫酸抱合体エストロゲンの細胞内取り込みに作用するOATPとその代謝酵素であるSTSの亢進が観察され、E1Sを積極的に取り込み、代謝することでエストロゲン枯渇状態をしのいで生存を図っている可能性が示唆された。現在、これらの耐性株のマウス移植実験を進めている。
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