研究概要 |
近年の閉経後乳癌の内分泌治療の中心はアロマターゼ阻害剤(AI)である。最初の第3世代のAIが臨床に用いられるようになって10年近くが経過し、近年その再発や耐性が大きな問題となっている。その原因には治療に伴う細胞内のエストロゲンシグナル経路の変化がひとつの大きな要因になっていると思われる。そこで我々が以前樹立したERE-GFP導入ER陽性乳癌細胞を親株にして各種耐性モデル細胞を作製し、そのシグナル経路を解析した。長期エストロゲン枯渇状態やin vivoに近い、アンドロゲン添加状態やAI剤添加状態で生き残ったコロニーをER活性によるGFP蛍光を指標にして複数株を単離・樹立することによって最終的に6種類の耐性機序の異なった 耐性モデル細胞を作製した(特許申請中:特願2011-152458 特願2013-108774)。そしてそれらのcharacterizationを詳細に行った結果、従来も報告されていたPI3K-Akt経路を介したERのリガンド非依存的活性化による耐性細胞が得られたが(原著論文J. Steriod Biochem. Mol. Biol., 139: 61-72, 2014)、他にもエストロゲン様活性を有するアンドロゲン代謝産物を産生して利用する耐性株(原著論文Breast Cancer Res. Treat. 139: 731-740, 2013 及び Breast Cancer Res. Treat. 143(1), 69-80, 2014)やアンドロゲンそのものに依存してアンドロゲン受容体を介して増殖促進するもの(投稿中)など、これまでに知られてない複数の新規耐性機序を明らかにした。 今後、さらに研究を進めて、それぞれの機序を識別するバイオマーカーを明らかにし再発乳癌の個別化を可能にすることで2次治療の奏効性を上げ得るかもしれない。
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